藤原有年

藤原 有年について

藤原有年（ふじわら の ありとし）は、平安時代の初期から前期にかけて活躍した貴族である。彼は藤原南家乙麻呂流の出身で、父は右衛門権佐の藤原高扶であった。官位としては正五位下に昇進し、播磨守を務めた。また、彼の経歴は多岐にわたり、地方官を歴任している。

経歴の詳細

藤原有年の公的な経歴は、斉衡3年（856年）に備後守に任官されることから始まります。その後天安2年（858年）には近江介に、さらに貞観5年（863年）には大宰少弐に任じられています。そして貞観6年（864年）には讃岐介に就任し、文徳朝から清和朝にかけて地方官としての役割を果たしました。

しかし彼の官職においては、讃岐介在任中に発生したある事件が影響を与えました。貞観8年（866年）、彼は殺人事件に関する判決の誤りに責任を問われ、笞刑50と贖銅を科されたのです。このような処罰を受けた後も、彼は再び貞観11年（869年）に従五位上・播磨守に叙任され、地方官としての業務を継続しました。

また貞観18年（876年）には、清和天皇譲位の際に鈴鹿関の固関のために伊勢国に派遣されています。さらに検非違使佐や伊予守、上野介も務めており、位階は再び正五位下に達しました。

藤原有年申文

藤原有年が讃岐介として在任していた貞観9年（867年）に作成したとされる『讃岐国司解藤原有年申文』は非常に重要な歴史的資料です。この文書は草書体の仮名の最古の例とされ、また公文書に仮名が使用された最も古いケースとしても知られています。本書は東京国立博物館に所蔵されています。

この申文は「讃岐国戸籍帳」1巻の見返しに記されており、内容は因支首一族から和気公への改姓願いを記したものです。この際、藤原有年は讃岐介として文書を提出し、署名を行いました。

【申文の一部】
改姓人夾名勘録進上　許礼波奈世无尓加　官尓末之多末波无　見太末ふ波可利止奈毛お毛ふ　抑刑大史乃多末比天　定以出賜　いとよ可良無　有年申

この申文の中では、官に対し改姓を願う理由が述べられており、その背景や事情がうかがえます。また、この文書には藤原有年がその当時の讃岐国司であったことが示されています。讃岐国の官僚としての彼の役割や、当時の政治状況について理解する手がかりとなる貴重な資料です。

官歴と系譜

藤原有年の官歴は『六国史』によって詳しく記録されています。彼は従五位下から始まり、備後守や近江介、大宰少弐を経て、讃岐介に就任しました。その後、再び従五位上として播磨守に叙任されるなど、名門藤原家の一員として重要な役割を果たしています。

また彼の系譜についても触れておくと、父は藤原高扶、母は坂上関守の娘で、妻は建部氏という家庭背景があります。子女には藤原正茂と藤原正樹が名を連ねています。彼は平安時代の貴族社会において、重要な存在であったことが伺えます。

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