藤岡市助

日本の電力の父、藤岡市助：生涯と業績

藤岡市助（1857-1918）は、日本の工学、実業史にその名を刻む重要な人物です。「日本のエジソン」や「電力の父」と称えられる彼の生涯と、日本の電気事業発展への多大な貢献について見ていきましょう。

少年時代から工部大学校へ

藤岡市助は、1857年、現在の山口県岩国市に生まれました。藩校や兵学校を経て、1875年には岩国藩主からの奨学金を得て、東京の工部寮（後の工部大学校）電信科に入学。わずか6名という狭き門をくぐり抜けたエリートコースを歩みます。

工部寮では、ウィリアム・エドワード・エアトン教授ら著名な教授陣の下で学びを深め、1878年には銀座で日本初となるアーク灯点灯実験に参加しました。この実験は、後の電気記念日（3月25日）の制定にもつながる重要な出来事となりました。

教員から実業家へ

工部大学校卒業後、助手に就任した藤岡は、『電信初歩』という教科書を執筆するなど、教育にも携わりました。卒業論文では測定器ガルバノメータについて研究。その後、教授に昇進し、電気工学科を監督する立場に就きます。

1884年には、フィラデルフィア万国電気博覧会を視察し、ニューヨークでトーマス・エジソンと会見。この経験が、後の彼の事業に大きな影響を与えたと考えられます。

1886年には帝国大学工科助教授に就任するも、わずか10ヶ月で退職。そして、東京電燈の設立に参画します。これは、山尾庸三らの尽力、そして渋沢栄一らの関与によるものでした。同郷の先輩、江木千之も電球製造において彼を支えました。

東京電燈と白熱舎（後の東芝）

東京電燈設立後、藤岡は技師長として活躍しますが、交流・直流論争では、エジソンを支持する立場をとりました。これは、財界からの資本投下があったことによる制約もあったと推測されます。

1890年には三吉正一と共に白熱舎（後の東京電気株式会社、現在の東芝）を設立。同年に上野公園で開催された内国勧業博覧会では、日本で初めてとなる電車を走らせるなど、電気事業の普及に尽力しました。浅草の凌雲閣へのエレベーター設置なども彼の功績です。

晩年とその後

1907年には故郷岩国に岩国[[電気軌道]]株式会社を設立し、社長に就任。1909年には中国地方初の電車を開業させました。

1916年には、川崎にあった東京電気堀川町工場に彼の銅像が建立されました。しかし、太平洋戦争中の金属供出により一度消失、1980年に再建されました。2014年には、故郷の岩国市にも銅像が建立されています。

1918年に亡くなった藤岡市助ですが、彼の功績は東芝という企業、そして日本の電気事業の発展に、現在も受け継がれています。彼の生涯は、日本の近代化を支えた先駆者の一人としての物語として、今も語り継がれています。 彼の没後、1939年には東京電気株式会社と芝浦製作所が合併し、東芝が誕生しました。岩国市にある岩国学校教育資料館には、藤岡市助に関する史料約3500点が保存されています。

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