山尾庸三

山尾庸三：日本の近代化を支えた人物

山尾庸三(1837-1917)は、幕末から明治にかけて活躍した日本の政治家であり、子爵の称号を授与された人物です。山口県出身の山尾は、長州藩の重臣であった山尾忠治郎の次男として生まれました。彼は、太平洋戦争時の昭和天皇の側近として知られる木戸幸一の母方の外祖父にあたります。

幕末期の活動

山尾は若い頃から経理の才能を認められ、長州藩に仕えました。その後、江戸へ行き桂小五郎に師事し、江川塾にも学ぶなど、幅広く知識を習得しました。文久元年(1861年)には幕府の船に乗り込みアムール川流域を査察、帰国後は箱館で武田斐三郎に師事しました。

文久2年(1862年)には、英国公使館焼き討ち事件や、塙忠宝暗殺にも関与しました。文久3年(1863年)には長州藩が購入した癸亥丸の測量方を務め、航海に従事。この経験が、後の洋行留学につながります。同年、山尾は野村弥吉(後の井上勝)と共に洋行留学を願い出、伊藤博文、井上馨、遠藤謹助らと共にイギリスへ留学することになります。この5人は後に「長州五傑」と呼ばれるようになりました。

イギリス留学と技術習得

[イギリス]]では、ロンドンのユニヴァーシティ・カレッジ・[[ロンドン]で2年間、英語と基礎科学を学びました。優秀な成績で卒業後、グラスゴーに移り、造船所で技術研修を受けながらアンダーソン・カレッジ(後のストラスクライド大学)の夜学にも通いました。グラスゴーでの生活は、勤勉で日本の将来のために努力する山尾の姿を周囲に印象づけました。

明治政府での活躍

明治元年(1868年)に帰国した山尾は、明治政府に出仕。横須賀製鉄所を担当した後、伊藤博文と共に工部省の設立に尽力しました。特に、工部省を民部省内の一組織ではなく、独立した省として設立すべきだと強く主張し、その実現に貢献しました。

工部省設立後は、工学寮と測量司の長に就任し、日本最初の実務技術者養成機関である工学校の設立に尽力しました。この工学校は後に工部大学校となり、現在の東京大学工学部の前身となりました。山尾は工部省の要職を歴任し、日本の工鉱業発展に大きく貢献しました。

山尾は、工学教育の重要性を強く訴えました。当時の反対論を押し切り、工学寮の設立を実現させた彼の先見の明は高く評価されています。また、ほぼ同時期に障害者教育の必要性を訴える建白書を提出するなど、幅広い分野で活動しました。

長崎製鉄所の不正経理の調査にも携わり、民営化後の事業にも支援を惜しまなかった山尾は、官営工場の民間への払下げが進んだ後も、参事院議官、参事院副議長などを務めました。工部省廃止後には法制局初代長官に就任し、宮中顧問官なども兼任しました。1887年には子爵に叙せられました。

官庁集中計画と霞が関

法制局長官を辞任した山尾は、臨時建築局の総裁に就任。井上馨が始めた官庁集中計画を大幅に修正し、現在の霞が関の中央官庁街の原型となる計画を作成しました。この計画は日本の行政の中枢を形成する上で重要な役割を果たしました。

晩年とその後

1898年に退官した後も、社会運動、特に障害者教育に尽力し続けました。1915年には日本聾唖協会の総裁にも就任しました。1917年に亡くなりましたが、彼の功績は日本の近代化に多大なる影響を与えました。彼の温厚な人柄と、日本の発展への献身的な姿勢は、多くの人々から高く評価されています。

エピソード

山尾は酒を全く飲めなかったという逸話や、部下であった井上勝との確執と、後に和解したエピソードなど、数多くの逸話が残されています。これらのエピソードは、彼の複雑な人物像を垣間見せてくれます。

もう一度検索