藤本二三代

藤本二三代（ふじもと ふみよ）は、昭和・平成期に活躍した日本の女性歌手です。本名を三谷綾子といい、昭和12年（1937年）5月13日に生まれました。その生涯は、昭和歌謡史に名を刻む歌手としての活動と、著名な浪曲歌手である藤本二三吉との家族関係が特色として挙げられます。

二三代の父親が再婚した相手は、当時既に大御所歌手としての地位を確立していた藤本二三吉でした。二人は血縁関係こそありませんでしたが、義理の母娘とは思えないほど強い愛情で結ばれており、周囲からも「実の母娘以上に仲が良い」と評判でした。

二三代が歌手を志した際、長年芸能界の酸いも甘いも知り尽くした二三吉は、娘の将来を案じて当初は反対しました。しかし、二三代の歌手への熱意と諦めない姿勢に触れるうちに、心を動かされ、以降は熱心に娘の活動をサポートする最大の理解者となりました。二三吉の尽力もあり、二三代は戦後歌謡界を代表する作曲家の一人であり、「吉田メロディー」として知られる数々のヒット曲を生み出した吉田正に師事する機会を得ます。

昭和31年（1956年）、藤本二三代はビクターレコードから「花の十九よさようなら」で満を持してプロ歌手としてのデビューを果たしました。デビュー後間もなく、その才能は開花します。昭和32年（1957年）11月には「夢みる乙女」を、翌昭和33年（1958年）11月には「好きな人」を、そして昭和35年（1960年）12月には「花の大理石（マーブル）通り」を相次いで発表し、これらの楽曲がいずれも大ヒットを記録しました。これらの初期の代表曲は、全て師である吉田正が作曲を手がけたものであり、二三代の清楚な歌声と青春の感情を歌い上げる表現力が多くの聴衆の心を捉えました。

人気歌手としての地位を不動のものとした二三代は、当時の歌手にとって最高の栄誉の一つであったNHK紅白歌合戦に、昭和32年（1957年）から昭和35年（1960年）まで4年連続で出場するという輝かしい功績を残しました。これは、当時の歌謡界における彼女の高い人気と実力を示すものでした。

歌唱活動に加え、映画の世界にもその歌声は届けられました。昭和36年（1961年）には、岩下志麻が主演を務めた松竹映画『あの波の果てまで・3部作』の主題歌を担当し、スクリーンを通じても多くのファンを魅了しました。また、俳優の里見浩太郎（現在の里見浩太朗）とはデュエット曲をリリースするなど、様々な分野のアーティストとの共演も行いました。

歌手活動は昭和期を通して精力的に行われましたが、昭和48年（1973年）に発表された「二人の北新地」が、結果的に最後のレコード作品となりました。

晩年、平成13年（2001年）3月28日、大動脈解離により惜しくも急逝されました。享年63歳でした。二三代の音楽の才能は、娘である歌手の藤本じゅりにも受け継がれています。

藤本二三代は、短いながらも充実した歌手人生の中で、義母・藤本二三吉との強い絆、師・吉田正との出会い、そして数多くのヒット曲と紅白歌合戦連続出場という功績を残しました。青春歌謡からムード歌謡まで幅広いジャンルを歌いこなし、多くの人々に愛されたその歌声は、今もなお語り継がれています。

主な楽曲としては、以下のものが知られています。

花の十九よさようなら
夢みる乙女
好きな人
東京の空の下で
花の大理石（マーブル）通り
あの波の果てまで
旅は青空（里見浩太郎とのデュエット）
すみれ娘
銀座の月
あたしだけの夜
雨のホテル
しのび逢い
昼下がりのブルース
古い手帖
ああ美しき人ゆえに
ひなげし小唄
潮来の兄妹（三浦洸一とのデュエット）
声も千両（三浦洸一とのデュエット）
明日は東京へ帰る人
酒場の花
祇園小唄（オリジナルは藤本二三吉)
あの山見れば
白樺郵便
浪花そだち
恋やつれ
恋の先斗町
週末
むすめ舟方さん
ふたりの北新地

テレビ番組への出演歴も多数あり、代表的なものには以下の番組が挙げられます。

スター千一夜（フジテレビ）
あなたのメロディー（NHK）
なつかしの歌声（テレビ東京）
昭和歌謡大全集（テレビ東京）

歌手としてだけでなく、いくつかの映画にも出演し、女優としても活動しました。

夜霧の南京街（1958年、東映）
右門捕物帖 片目の狼（1959年、東映）
初春狸御殿（1959年、大映） - ※DVD発売
噛みついた若旦那（1960年、東宝）
東京の空の下で（1960年、大映）
北上夜曲　北上川の初恋（1961年、大映）
お世継ぎ初道中（1961年、東映）
銭形平次捕物控　美人鮫（1961年、大映）
次郎長と小天狗　殴り込み甲州路（1962年、東映）

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