長野豊山

長野豊山（ながの ぶざん/ほうざん）

長野豊山は、江戸時代後期に活躍した儒学者であり、その卓越した詩文の才能で知られています。天明3年7月28日（1783年8月25日）に生まれ、天保8年8月22日（1837年9月21日）に55歳で生涯を閉じました。本名は確（かく）、字は孟確（もうかく）といいました。

生涯

長野豊山は、伊予国川江（現在の愛媛県四国中央市）で、父・祐清（積芳と号す）と母・平田氏の間に生まれました。幼少の頃から学問に励み、7歳で句読を学び、11歳で五言・七言の詩を作るほどの才能を発揮しました。19歳になると、大阪に出て中井竹山に師事し、詩経、書経、春秋左氏伝などの古典を学びました。竹山の死後、江戸に遊学し、柴野栗山、尾藤二洲、古賀精里といった著名な儒学者たちに師事しました。特に尾藤二洲の下では、徳行の近藤篤山、経書の越智高洲と共に、「文章の豊山」と称されるほど、その文才を高く評価されました。

学業を終えた豊山は、文化10年（1813年）に神戸藩の本多家に儒学掌教として仕官しましたが、その狷介な性格が災いし、人に媚びることができなかったため、藩の職に馴染めませんでした。文政2年（1819年）には病気を理由に辞職し、その後は江戸に私塾を開いて後進の育成に励みました。彼の門下からは、藤森弘庵や林靏梁などの文章家、遠山雲如のような詩人が輩出しました。

長野豊山は55歳でこの世を去り、その墓は東京都港区高輪にある廣岳禅院にあります。墓碑の碑文は、門下生の林靏梁によって書かれました。また、平田氏の妻との間に生まれた長男の瑋（い）が後を継ぎましたが、次男の卓（たく）は夭折しました。

著作

長野豊山の著作で特に有名なものとしては、以下のものがあります。

『松陰快談』：この著作は、早くから評判となり、中国にも渡り、『昭代叢書癸集』に収録されました。彼の思想や学問に対する見解が示された重要な著作です。
『武乗三名士伝』：武乗地方の三人の著名な人物の伝記をまとめたものです。歴史的な資料としても価値があります。
『嘉聲軒文約』：自身の文章に関する理論や方法をまとめたものです。文章の書き方に関する彼の考えを理解する上で重要です。
『嘉聲軒詩約』：自身の詩作に関する理論や方法をまとめたものです。彼の詩に対する考えを知る上で欠かせません。

参考文献

森銑三『偉人暦 続編』下（中公文庫、1997年） ISBN 978-4-12-203017-6

外部リンク

デジタル版 日本人名大辞典+Plus『長野豊山』 - コトバンク
* 伊予国宇摩郡川之江村長野家文書 - 国文学研究資料館史料情報共有データベース

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