蜂谷豊彦

蜂谷 豊彦

日本の学術界において、経営学および会計学の分野で重要な貢献を続けているのが蜂谷豊彦氏です。1963年に茨城県で生を受けた同氏は、現在、国立大学法人一橋大学の理事および副学長という要職を務めるとともに、同大学大学院経営管理研究科の教授として、後進の指導と研究活動に精力的に取り組んでいます。博士（学術）の学位を有し、その研究成果は日本証券アナリスト協会証券アナリストジャーナル賞を受賞するなど、学界内外から高く評価されています。

経歴

蜂谷氏の学術的な旅は、地元茨城県の茨城県立土浦第一高等学校を卒業後、一橋大学経済学部へと進んだことから始まりました。経済学部では美濃口武雄氏のゼミで学び、1985年に卒業を迎えます。同年、株式会社三菱総合研究所に入社し、実業界での経験を積みました。しかし、学術への探求心は衰えず、1993年には一橋大学大学院商学研究科の博士後期課程に進学。ここでは、著名な会計学者である伊藤邦雄氏の薫陶を受け、深い洞察力を養いました。同年、単位取得満期退学を経て、東京工業大学工学部経営システム工学科の助手として教員の道に進み、古川浩一氏の指導のもとで研究を深めました。1996年には、「日本企業の投資決定プロセス」に関する論文によって東京工業大学から博士（学術）の学位が授与されました。

教員としてのキャリアは、1994年に青山学院大学経営学部専任講師として本格的にスタートしました。1996年には同大学の助教授に昇任し、教育・研究活動に貢献しました。1998年には東京工業大学大学院社会理工学研究科経営工学専攻に移り、助教授、その後准教授として活躍。そして2009年、母校である一橋大学に戻り、大学院商学研究科の経営講座教授に着任しました。一橋大学では、研究者としてのみならず、組織運営においてもその手腕を発揮し、2015年には大学院商学研究科長を務めました。さらに、2018年からは国立大学法人一橋大学の理事および副学長として、大学全体の運営と発展に重要な役割を担っています。

研究活動と業績

蜂谷氏の専門は、経営学と会計学にまたがり、特に企業経営の財務戦略、会計制度、企業評価、そしてコーポレート・ファイナンスやコーポレート・ガバナンスといった分野で先駆的な研究を行っています。大学院時代の伊藤邦雄氏や、東京工業大学時代の古川浩一氏といった、それぞれの分野における第一人者からの指導が、氏の研究スタイルと対象領域に深く影響を与えていることがうかがえます。

博士論文で日本の企業の投資決定プロセスに光を当てたことに加え、2009年には「株主構成と株式超過収益率の検証―市場志向的ガバナンスのわが国における有効性―」と題された論文で、日本証券アナリスト協会証券アナリストジャーナル賞を受賞しました。この論文は、わが国におけるコーポレート・ガバナンスの有効性、特に株主構成が企業の収益率に与える影響を実証的に分析したものであり、学術的な貢献とともに、実務家からも高い関心を集めました。

主な著書

蜂谷氏の研究成果は多くの著書としても結実しており、その多くは共同研究者と共に執筆されています。主な著書には以下のようなものがあります。

『企業経営の財務と会計』（中村博之と共著）朝倉書店 2001年
『キャッシュ・フロー会計と企業評価』（伊藤邦雄責任編集, 桜井久勝, 百合草裕康と共著）中央経済社 2004年、第2版2006年
『ベンチャー評価モデルの構築と新規株式公開アノマリーの解明』東京工業大学 2006年
『基礎からのコーポレート・ファイナンス』（古川浩一,中里宗敬, 今井潤一と共著）中央経済社 2006年
* 『コーポレート・ファイナンスの考え方』（古川浩一,中里宗敬, 今井潤一と共著）中央経済社 2013年

これらの著書は、企業経営やファイナンス、会計に関する幅広いテーマを扱っており、多くの学生や実務家にとって貴重な文献となっています。教育、研究、そして大学運営という多岐にわたる活動を通じて、蜂谷氏は日本の学術界と実業界の発展に貢献し続けています。

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