蜂須賀随子

蜂須賀随子

蜂須賀随子（はちすか よりこ）は、嘉永7年（1854年）に生まれ、大正12年（1923年）に没した女性です。旧阿波国徳島藩主・侯爵であった蜂須賀茂韶（はちすか もちあき）の妻として知られています。

生涯

随子は、常陸水戸藩主・徳川慶篤（とくがわ よしあつ）の長女として、江戸小石川の藩邸で誕生しました。母は有栖川宮幟仁親王（ありすがわのみや たかひとしんのう）の娘である線宮幟子女王（もとみや のぶこじょおう）です。幼名は随姫（よりひめ）といいました。

華族女学校で学んだ随子は、和歌に才能を発揮し、間宮八十子（まみや やそこ）、小杉榲邨（こすぎ ていそん）、松浦正明（まつうら まさあき）らに師事しました。教養豊かな女性として成長したのです。

明治14年（1881年）、28歳の時に、旧徳島藩主・蜂須賀茂韶の継妻となります。当時、茂韶には11人の側室がいたとされ、随子は嫁ぐにあたり、この11人全員に暇を出すことを条件にしたという逸話が残っています（蜂須賀年子『大名華族』より）。

また、随子は結婚前に松平大和守との婚約歴があったため、「二夫にまみえず」という女訓から、茂韶との肉体関係を拒んだとされています。代わりに、侍女として萩原きょうという美女を連れて嫁ぎ、彼女を自身の身代わりとするよう求めたという話も伝えられています。

蜂須賀家に入ってからは、結婚前に側室から生まれていた蜂須賀正韶（はちすか まさてる）の嫡母として遇されました。また、正韶の妻には、随子の縁で徳川慶喜（とくがわ よしのぶ）の娘である筆子（ふでこ、随子の従妹にあたる）が迎えられました。さらに、明治18年（1885年）には、清水徳川家当主・徳川篤守（とくがわ あつもり）の娘・貞子（さだこ、随子の姪にあたる）を養子に迎えています。

歌人としても才能を発揮し、歌集『千尋のみどり』を著しました。大正12年（1923年）に70歳で亡くなっています。

補足

随子の最初の婚約者については、蜂須賀年子の『大名華族』では「松平大和守」とされていますが、川越藩松平家かどうかは定かではありません。明治初期に作成されたと思われる『常陸水戸徳川家譜』には、「松平定教室（まつだいら さだおしえ）」と記載されています。

『平成新修旧華族家系大成』によると、桑名藩主・松平定敬（まつだいら さだあき）の正室であり、明治12年（1879年）に離婚したとされていますが、これは松平定教（まつだいら さだのり）との混同である可能性が指摘されています。

このように、蜂須賀随子は、徳川家という名門の出身でありながら、旧大名家である蜂須賀家に嫁ぎ、その家のために様々な役割を果たした女性でした。和歌に親しみ、教養高く、また強い意志を持っていたことが、彼女の生涯からうかがえます。

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