血液検査の参考基準値

血液検査の参考基準値（けつえきけんさのさんこうきじゅんち、英語: Reference ranges for blood tests）とは、医療専門家が採取された血液サンプルの検査結果を評価し、その数値が一般的な健康な状態と比較してどうであるかを判断するために用いられる指標のことです。これらの基準値は、病理学の中でも特に体液に含まれる成分の分析を専門とする臨床化学（臨床生化学、化学的病理学などとも称されます）という分野で深く研究され、確立されています。

参考基準値は、個々の検査項目の測定値が、多くの健康な人々のデータから統計的に算出された特定の範囲内にあるかどうかを示します。この範囲から外れる値は、体のどこかに異常がある可能性を示唆することがありますが、基準値からの逸脱が直ちに病気であるとは限りません。年齢、性別、測定方法、検査施設など、様々な要因によって基準値は変動する可能性があるため、解釈には専門的な知識が必要です。

血液検査で測定される項目は非常に多岐にわたり、体の様々な機能や状態を反映しています。主な分類としては、以下のようなものがあります。

主要な分類項目

イオン及び微量金属: 体内の電解質バランスやミネラル成分の状態を示します。鉄や銅など、微量でも生体機能に不可欠な金属や、それらを運搬・貯蔵するフェリチン、トランスフェリン、セルロプラスミンといった結合タンパク質もこのカテゴリーに含まれます。

酸塩基及び血液ガス: 血液の酸性度（pH）や、酸素・二酸化炭素の濃度などを測定します。これらの値は、体の呼吸機能や代謝状態を知る上で重要です。測定する血液が動脈血か静脈血かによって、基準値が大きく異なるため、正確な評価にはどちらの血液を用いたかを特定することが不可欠です。

肝機能: 肝臓の働きを示す様々な酵素やタンパク質、ビリルビンなどの値を測定します。肝臓は代謝や解毒など多くの重要な役割を担っており、これらの検査値は肝臓の健康状態や機能障害の有無を判断するのに役立ちます。

心臓: 心筋細胞が損傷を受けた際に放出される特定の酵素やタンパク質などを測定します。例えば、トロポニンは心筋梗塞などの心疾患が疑われる場合に測定され、痛みの開始からの時間経過と共に値が変動することが知られています。

腫瘍マーカー: 特定のがんが存在する場合に、体内で過剰に生産される物質です。診断の補助や治療効果の判定、再発のモニタリングなどに用いられますが、必ずしもがんの存在を確定するものではありません。

内分泌: ホルモンの分泌状態を評価します。甲状腺ホルモン、性ホルモン、その他多くの種類のホルモンがあり、体の成長、代謝、生殖機能など、様々な生理機能の調節に関わる内分泌系の異常を検出するのに重要です。

アミノ酸: タンパク質の構成要素であるアミノ酸の種類や濃度を測定します。代謝異常や栄養状態の評価に用いられることがあります。

ビタミン類: 体の機能を正常に保つために必要なビタミン類の血中濃度を測定します。欠乏症や過剰症の診断に役立ちます。

有害物質: 薬物や環境中の有害物質など、体に悪影響を及ぼす可能性のある物質の血中濃度を測定します。

血液: 血液そのものの構成要素である赤血球、白血球、血小板の数や形態、ヘモグロビン濃度などを測定します。貧血、感染症、血液疾患などの診断に基本となる検査です。

凝固・線溶系: 血液が固まる（凝固）仕組みや、固まった血液を溶かす（線溶）仕組みに関連する因子や時間を測定します。血栓症や出血性疾患のリスク評価に重要です。

免疫: 免疫系の状態を評価します。病原体に対する抗体の種類や量、自己の組織を攻撃してしまう自己抗体の有無、炎症反応の強さを示す急性期タンパク質などが含まれます。

その他の酵素及びタンパク質: 体内の様々な生化学反応に関わる酵素や、その他の機能を持つタンパク質の値を測定します。

その他の電解物及び代謝物: ナトリウム、カリウムなどの電解質や、糖、尿素、クレアチニンなどの代謝によって生じる物質を測定します。体の水分バランスや腎機能などの評価に用いられます。

* 脂質: コレステロールや中性脂肪などの脂質成分を測定します。動脈硬化性疾患のリスク評価に重要です。

これらの多岐にわたる項目に関する参考基準値は、健康診断や人間ドック、あるいは特定の症状がある場合の精密検査において、個人の健康状態を客観的に把握し、適切な診断や治療方針の決定に不可欠な情報源となります。

関連項目として、健康診断、人間ドック、血液検査、尿検査などが挙げられます。

※本稿は一般的な情報に基づいて記述しており、個別の診断や治療に関するものではありません。医療専門家の指示に従ってください。

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