衝上断層

衝上断層（しょうじょうだんそう）とは

衝上断層とは、地層が水平方向に対して浅い角度でずれ上がり、上の地層が下の地層に覆いかぶさるように形成される断層のことです。特に、断層面と水平面とのなす角度（断層角）が45度以下のものを指し、低角逆断層とも呼ばれます。このタイプの断層は、地殻内で大きな変位を引き起こし、地質構造や地形の形成に重要な役割を果たしています。

概要

衝上断層は、45度以上の高角逆断層に比べて、変位量が大きいことが特徴です。このため、地殻の収縮力を効率よく消化することができ、活発な収束型境界に多く見られます。特に、収束型境界で発生する衝上断層は「メガスラスト」と呼ばれ、この断層の活動によって発生する地震は「メガスラスト地震」として知られています。また、地表に断層が現れないものを「ブラインドスラスト」、衝上断層の上盤側で逆向きに傾斜する分岐断層を「バックスラスト」と呼びます。活動的な衝上断層では、累積変位量が数十kmにも達するものも珍しくなく、広範囲にわたる隆起をもたらすことで、造山運動に大きく貢献しています。

主な衝上断層

砥部衝上断層

愛媛県砥部町に位置する砥部衝上断層は、中央構造線の露頭として知られています。砥部川の流れによって古い地層が新しい地層の上に重なっている様子が観察でき、川床には段差が生じて小さな滝のようになっています。この断層は、1200万〜1400万年前の地殻変動によって形成されたと推定され、後期白亜紀の和泉層群が中期始新世の礫岩からなる明神層の上に重なっています。1921年に河村幹雄博士によって発見され、1938年に国の天然記念物に指定されました。2007年には、日本の地質百選にも選定されています。付近には衝上断層公園があり、国道379号に接しています。

神戸丸山衝上断層

兵庫県神戸市長田区に位置する神戸丸山衝上断層は、1937年に国の天然記念物に指定された断層です。この地域における地質構造を理解する上で重要な役割を果たしています。

横山楡原衝上断層

富山県富山市と岐阜県飛騨市にまたがる横山楡原衝上断層は、1941年に国の天然記念物に指定されています。この断層は、地域の地質学的特徴を示す重要な証拠となっています。

グラールス衝上断層

スイス東部に位置するグラールス衝上断層は、累積変位量が100kmを超える大規模な断層です。観察が容易なため、衝上断層の研究対象として非常に重要であり、現在の衝上断層の成因が考え出されるきっかけとなりました。この地域は、スイスの活発な地殻変動地域サルドナとして世界遺産に登録されています。

参考文献

断層
地質・鉱物天然記念物一覧
ノースリッジ地震（ロサンゼルス地震）

外部リンク

国指定文化財 データベース（文化庁）
衝上（つきあげ）断層公園（砥部町）
岐阜の地学 / 断層 / 横山楡原衝上断層（岐阜大学教育学部理科教育 (地学) 講座）

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