袁尚

袁尚（えんしょう）

袁尚（生年不詳 - 建安12年（207年））は、後漢時代末期の武将。袁紹の息子であり、字は顕甫（けんぽ）。その生涯は、後漢王朝の衰退と群雄割拠の時代を色濃く反映している。

生涯

袁尚は、名門である汝南袁氏の出身。父・袁紹は、後漢末期の有力な群雄の一人であった。袁尚は生まれつき美貌で武勇に優れていたため、父と母の双方から深く寵愛されていた。袁紹は、年長の袁譚を差し置いて袁尚を後継者にしようと目論んでいたとされる。

しかし、袁紹は後継者を明確に指名しないまま病没。これが、袁氏一族の分裂を招くことになる。袁紹の死後、袁尚は、逢紀や審配らの支持を受けて後継者の地位を強引に獲得した。この強引なやり方に対し、年長の袁譚は反発。兄弟間の対立は決定的となり、袁氏は内部抗争に陥った。

袁譚との対立が激化する中、曹操が勢力を拡大。袁尚は、高幹や郭援らと連携して曹操に対抗しようとしたが、逆に曹操軍の侵攻を招き、本拠地である鄴を包囲された。袁尚は、曹操軍の攻撃に耐えかねて中山へと逃走。その後、袁煕を頼って幽州に落ち延びた。

しかし、袁煕軍の内部対立から、袁尚は烏桓へと逃亡。烏桓王の蹋頓（とうとん）と協力して曹操に抵抗を試みたが、白狼山の戦いで大敗を喫した。最後に、遼東の公孫康を頼って落ち延びるも、曹操を恐れた公孫康によって袁煕と共に斬首され、その首は曹操のもとに送られた。

人物像

袁尚は、美貌と武勇に優れていたとされる一方で、器量の面では劣っていたという逸話が残っている。袁譚との後継者争いの際、双方から招聘を受けた崔琰に対し、病気を理由に協力を拒否した崔琰を収監したという話は、袁尚の短慮さを物語るエピソードとして知られている。

評価

袁尚は、父・袁紹の寵愛を受けて後継者の地位についたものの、その後の内紛や戦略の失敗により、袁氏の衰退を招いた人物として評価されている。しかし、その美貌と悲劇的な最期は、後世の文学作品や演劇において、しばしばロマンチックに描かれている。

袁尚の生涯は、後漢末期の混乱と権力闘争、そして名門一族の没落を象徴する出来事として、歴史に刻まれている。

配下

逢紀
審配
沮鵠
高幹
袁煕

参考文献

『三国志』魏書6 袁紹伝（付・袁譚袁尚伝）
* 『後漢書』列伝64上・下 袁紹伝上・下（付・袁譚伝）

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