袖車絞め

袖車絞（そでぐるまじめ）

袖車絞は、柔道における絞め技の一つであり、講道館柔道絞技12本にも名を連ねています。主に柔道やブラジリアン柔術のような着衣を伴う格闘技で使用されます。講道館や国際柔道連盟 (IJF) では正式名称を「袖車絞」とし、IJF略号はSGJです。挟絞の一種として分類されます。

概要

袖車絞の基本的な形は、両手で自分の反対側の袖を握り、相手の頸部を絞めるものです。この技は、相手と正対した状態でも、背後から絞める形でもかけることができます。

片手のみで袖を握る場合は、袖を持つ手を相手の頭の後ろに回すパターンと、相手の喉元に当てるパターンがあります。相手の頭の後ろに片腕を回して土台を作り、もう一方の手で相手の喉元に手刀のように当てて絞める方法もあります。

柔道やブラジリアン柔術の試合でよく見られるこの技は、他の絞め技とは異なり、自分の着衣を利用することが特徴です。柔道家の小室宏二選手が得意としており、裸絞や送襟絞といった代表的な絞め技に比べると地味ながらも、決まりやすく、効果も大きいと評しています。ブラジリアン柔術では、国際ブラジリアン柔術連盟、国際柔術連盟ともにティーン (U16) 以下では禁止されています。フルガードのインサイドガードポジションからは絞め技は極まりにくいものの、袖車絞は極まることが多く、その威力は侮れません。映像資料『高専柔道～寝技の真髄～』でも紹介されています。

小室宏二選手は、内柴正人選手との試合で初めてこの技を使い勝利しましたが、当時はまだ袖車絞という名前すら知らなかったそうです。引退後、指導者となった小室選手は、自身の得意技である片閂（コムロック）とともに袖車絞を教え、その普及に尽力しました。

試合での実例

グランドスラム・デュッセルドルフ2018 男子73kg級三回戦：デニス・ヤルツェフ（ロシア）がフェルディナンド・カラペティアン（アルメニア）に袖車絞で敗北。カラペティアン選手は相手の背後から両袖を掴み、喉に当てた前腕側の腕を相手の腋の下に通す形で絞めました。
グランドスラム・アブダビ2018 男子90kg級一回戦：ビクトル・アヒアボル（ガーナ）がタビス・トゥータ（ラトビア）に袖車絞で敗北。トゥータ選手は両袖を取る形でフルガードのインサイドガードポジションから絞めました。

歴史

1936年、柔道家の竹田浅次郎が書籍『対拳式実戦的柔道試合法』で袖車絞を「袖利用の絞技」として紹介しました。1959年には、大滝忠夫が書籍『柔道十講』で当技と脚を使った挟絞を「袖車技」の名称で紹介しています。1985年2月1日、講道館が「柔道の技名称固技」を発表し、当技の名称を「袖車絞」としました。ブラジリアン柔術研究家の奥田照幸氏によると、1988年にオリンピック柔道ブラジル代表のエゼキエル・パラグアスがブラジリアン柔術の練習中にクローズドガードの中から袖車絞で仕留めたことがきっかけで、ブラジリアン柔術では袖車絞を「エゼキエルチョーク」と呼ぶようになったそうです。1995年9月、千葉市でのIJF総会で「IJF技名称」が承認され、講道館と同様に当技の名称を「袖車絞」としました。

分類と名称

醍醐敏郎氏の書籍『柔道教室』や『高専柔道の真髄』では、袖車絞のことを「裸絞」と呼んでいます。これは、講道館が固め技の分類を制定する1985年以前の柔道界では、自分の着衣を用いる場合、裸絞とされることが多かったためです。高専柔道界では「車絞」とも呼ばれていました。古流柔術界や1985年以前の柔道界では、背後からの十字絞である後十字絞を「袖車絞」「袖車」と呼ぶのが一般的でした。

裸体総合格闘技の大会UFCでは、2017年1月の興行で初のエゼキエルチョークでのサブミッション勝ちが記録されました。しかし、柔道ではこの時の技は裸絞に分類されます。また、ブラジリアン柔術ではエゼキエルチョークは袖をつかんだ技に限定されており、この時の技はノーギ・エゼキエル・チョークでした。UFCではノーギ・エゼキエル・チョークも「エゼキエルチョーク」に含んでいるため、このような違いが生じています。

参考資料

袖車絞 / Sode-guruma-jime - YouTube KODOKANチャンネル
小室宏二による技術解説
* 袖車絞｜柔道チャンネル

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