裁許状

裁許状について

概要

裁許状（さいきょじょう）は中世から近世にかけて、特に江戸時代において、裁許を当事者に通知するために発行された文書です。元々「裁許」とは、下位者からの申し出に対し、上位者がその承認や拒否を示す行為を指していました。しかし、当時の権力構造においては、行政判断だけでなく、訴訟の解決においても同様の手続きが行われ、裁許状も広く用いられました。これにより、現在の裁判所の判決とは異なり、裁許状は上位者の意見を示し、和解を促すためのものとされていました。

平安時代

平安時代の日本では、裁許状は通常、太政官符や太政官牒、または官宣旨という形式で作成されていました。鎌倉時代には、朝廷裁許状の流れを受け継いだ下文の形式が採用されましたが、次第に下知状の様式に変化しました。これは、執権が政治の実権を握るようになったためとの見方があります。裁許状の書式は、事の始めに訴人と被告の名前、訴訟内容の要点を示し、本文には両者の訴状や陳状、問注記の解説を含む形が多く、担当の役人がサインをするところも特徴です。

鎌倉・室町時代

鎌倉幕府においては、征夷大将軍の意思をもとに執権や連署が裁許状を出しました。例えば、六波羅探題や鎮西探題もそれぞれ裁許状を発行していました。室町幕府では、初期に足利直義が署名した裁許状が見られ、その後、執事や管領が連署する様式に変化しました。裁許状が簡略化され、主張部分を省いて裁許の内容だけを記載したものも現れました。

江戸時代

江戸時代では、裁許状は裁許請証文という用語で知られ、民事訴訟の判決文書と密接に関連していました。この過程では、奉行が提起された訴訟について当事者に裁許を伝える「申渡」を行い、これが裁許状として解釈されることもありましたが、正式な文書は後に別室で発行されました。この文書には、訴状や返答書の要旨と判決理由が詳細に記載され、双方の押印が求められました。また、境界に関する問題の際には裁許絵図も作成され、裁許状の一部として扱われました。さらに、金公事や店立に関しては、附属文書も裁許状の一部として必要とされ、慎重な管理が求められました。

結論

裁許状は日本の中世から近世にかけての法的な意思伝達において中心的な役割を果たしました。その形式や内容の変遷は、当時の権力構造や社会の変化を反映しており、歴史を理解する上でも重要な文書です。

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