装甲ボックスランチャー

装甲ボックスランチャー（Mk.143 Armored Box Launcher: ABL）

装甲ボックスランチャー（ABL）は、アメリカ海軍におけるトマホーク巡航ミサイルの発射機の一種で、その特徴として周囲が装甲で覆われた形状が挙げられます。これは、1980年代に開発されたもので、従来の水上艦には適していない既存のミサイル発射システムと差別化するために設計されました。

トマホークの背景

トマホークミサイルは1970年代から1980年代にかけて開発されており、そのサイズは比較的大きいことが特徴です。この大型ミサイルは、当時のアメリカ海軍が保有していた発射システムの設計とは一致せず、ミサイル庫や発射機の新たな開発が急務とされました。実際、トマホークを搭載するための適切な場所として、艦の甲板上に設置することが提案されましたが、防御力の低下が懸念されました。

この課題を克服するために、周囲を装甲で覆う形の発射機が求められ、結果的にMk.143装甲ボックスランチャー（ABL）が誕生しました。ABLはその名の通り、装甲を備えており、ミサイルを安全に発射できる設計になっています。

ABLの特徴

装甲ボックスランチャーは、4連装の発射機構を持ち、ミサイル発射の際には発射筒を斜めに傾けてから発射します。これは、トマホークミサイルの特性を活かすための工夫と言えるでしょう。そのため、ミサイルの発射高度や方向を調整しやすく、攻撃の柔軟性を高めています。

この発射機は1980年代前半より水上艦に取り入れられ、既存艦への改修による追加搭載が進められました。しかし、より多機能で柔軟な搭載能力を持つMk.41垂直発射システム（VLS）の実用化が進んできたことに伴い、装甲ボックスランチャーは次第に使われなくなりました。

搭載艦

装甲ボックスランチャーは以下の艦船に搭載されました：

• - アイオワ級戦艦：この戦艦には、Mk 12 5インチ砲などを降ろした場所に8基のABLを搭載。
• - 原子力ミサイル巡洋艦「ロングビーチ」：この艦にも装甲ボックスランチャーが装備されました。
• - バージニア級原子力ミサイル巡洋艦：こちらも同様にABLが搭載。
• - スプルーアンス級駆逐艦：このクラスの艦船は6隻のみがABLを搭載。

スプルーアンス級駆逐艦では、前甲板のアスロック対潜ミサイル発射機の左右の甲板に2基が配置され、その他の艦では艦の後部に2基ずつ搭載された事例が多く見られました。これにより、各艦船は敵艦への精密攻撃能力を高め、その運用の幅を広げていました。

装甲ボックスランチャーは、その特異な設計と実績からアメリカ海軍における重要な兵器システムの一つとして位置づけられ、その後の発展に寄与したと言えるでしょう。しかし、現代の海軍戦力の変化に伴い、新たな発射システムへと取って代わられていく運命にあります。

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