近衛大将

近衛大将についての詳細

近衛大将（このえのだいしょう）は、日本の律令官制における重要な役職の一つで、宮中における警護を担当する左右の近衛府の長官を指します。左近衛府には左近衛大将（さこんえのだいしょう）、右近衛府には右近衛大将（うこんえのだいしょう）があり、略して「左大将」「右大将」と呼ばれています。一般的に左大将の方が高位に位置し、各府に定員は1名で、権官は設けられていません。近衛大将は常設の最高武官であり、馬御監と兼任することもありました。また、日本語における近代軍の階級である「大将」という呼称もこの職に由来しています。

歴史的背景

近衛府は、奈良時代後期の天平神護元年（765年）に授刀衛を改組して設置され、最初の近衛大将には藤原蔵下麻呂が任命されました。当初の官位は正三位に相当していましたが、延暦12年（793年）に従四位上に降格し、平安時代の初期には再び従三位相当に昇格しました。大同2年（807年）には近衛府の再編が行われ、左近衛府と右近衛府に分かれました。藤原内麻呂が初代の左近衛大将に、坂上田村麻呂が初代の右近衛大将となりました。

近衛大将はもともと参議以上の兼官でしたが、時代の移り変わりと共に大臣や大納言の兼官が一般的になり、平安中期以降は公卿が就任する職として定着しました。特に、正三位以上の者がこの役職に任官されることが一般化し、また内[[大臣]]が空席の場合には、大納言が一般的に兼任し、権益を有する者と見なされるようになりました。任官者は「右（左）大将何某」と呼ばれ、従三位相当とはいえ、正三位の大納言よりも上の地位であると認識されていました。

近衛大将の名声と競争

職務の実質が薄れた後も、近衛大将は名誉ある職として尊重され、これを巡る争いが見られました。貞元2年（977年）には、関白藤原兼通が死を控え、政敵である弟の兼家から右大将を奪う事態がありました。参加していた公卿の誰もが後任を名乗り出ない中、権中納言の藤原済時が名乗り出て任じられることとなりました。寛治7年（1093年）には、左大臣源俊房が左大将を兼ねることになりましたが、これらの任官配分にはさまざまな背景がありました。

平安時代の近衛大将にはさまざまな逸話が残されており、特に藤原宗通が大将に任命されようとしたところを堀河天皇が妨げたという伝説もあります。一方で、平治物語にあるように、藤原成親が大将に就任できなかったことが、後の大きな混乱の要因となったとも伝えられています。

武家政権と近衛大将の関係

武家政権が成立した後、近衛大将は源頼朝や足利氏の将軍と関連を持つ重要な役職となりました。源頼朝は平治の乱で流罪となった後、権大納言と右大将に任ぜられ、鎌倉幕府確立に寄与しました。以降は足利将軍が右大将に任じられることが慣例となり、この地位は武士階級にとっても重要な位置付けとなっていました。特に織田信長が権大納言・右大将に任ぜられたことから、信長は将軍同等の存在として認識されるようになりました。

江戸時代に入ると、左大将の地位は摂家が独占することになり、右大将には清華家のみが任じられるようになりましたが、一部将軍が兼任することもありました。近衛大将はその後も日本の官職において重要な位置を占め続けました。

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