製造等禁止物質

製造等禁止物質：人体への深刻なリスクと厳格な規制

労働安全衛生法では、労働者に重篤な健康障害を引き起こすおそれのある物質の製造、輸入、譲渡、使用などを厳しく禁じています。これらの物質は、製造等禁止物質と呼ばれ、尿路系、血液、肺などに悪性腫瘍を発生させることが明らかな危険性を持つため、その取り扱いには細心の注意が必要です。

規制の対象となる物質

製造等禁止物質は、労働安全衛生法施行令で具体的に列挙されています。具体的には、黄りんマッチ、ベンジジンとその塩、4-アミノビフェニルとその塩、石綿（一部例外を除く）、4-ニトロジフェニルとその塩、ビス(クロロメチル)エーテル、ベータ―ナフチルアミンとその塩、ベンゼン含有量の高いゴムのりなどが該当します。さらに、これらの物質を一定量以上含む製剤なども規制の対象となります。

厳格な規制と許可制度

製造等禁止物質を取り扱う際には、厚生労働省令で定められた厳格な基準を遵守しなければなりません。具体的には、密閉式の設備を使用すること、作業場の床を容易に清掃できる構造にすること、作業者は必要な知識を有していること、物質が漏れない堅牢な容器を使用すること、保管場所を指定して表示すること、保護具を着用すること、関係者以外の立ち入りを禁止することなどが挙げられます。

これらの基準を満たすためには、都道府県労働局長の許可を得ることが必要です。許可申請には、所定の書類の提出が必要です。許可が下りた場合でも、許可証は申請内容に限定され、試験研究目的の場合でも、代替物質の使用を積極的に検討するよう指導されます。許可数は近年非常に少ないのが現状です。

歴史的背景

日本の製造等禁止物質に関する規制は、1921年の「黄燐燐寸製造禁止法」に端を発します。これは、黄りんマッチの健康被害を防止するため、国際的な動きを踏まえて制定されました。その後、労働基準法、そして現在の労働安全衛生法へと規制は継承・強化され、対象物質も拡大しています。

結論

製造等禁止物質は、労働者の健康に深刻な影響を与える可能性を持つため、その製造や取り扱いには、厳格な規制と管理体制が不可欠です。企業は、法令を遵守し、労働者の安全と健康を守るための適切な対策を講じる必要があります。また、研究開発においても、代替物質の使用など、より安全な方法を積極的に検討することが重要です。

参考文献

・畠中信夫著「労働安全衛生法のはなし［改訂版］」中災防新書、2006年5月15日発行

関連情報

・労働安全衛生法
・労働安全衛生規則
・北海道大学の安全管理｜製造等禁止物質または製造許可物質について
・労働安全衛生法 - E-gov

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