複占

複占とは：二社による市場の支配

複占（ふくせん、英: duopoly）とは、特定の財やサービスの供給者が、市場においてわずか二社しか存在しない状態を指します。これは、供給者が一社のみの「独占」とは対照的な状況です。

経済学における複占モデル

経済学では、複占の状態を分析するためのモデルがいくつか存在します。代表的なものとして、以下の二つが挙げられます。

クールノー競争: 企業が供給量を操作変数として競争するモデルです。各企業は、相手企業の供給量を予測し、自社の利潤を最大化する供給量を決定します。
ベルトラン競争: 企業が価格を操作変数として競争するモデルです。各企業は、相手企業の価格を予測し、自社の利潤を最大化する価格を決定します。

これらのモデルにおいて、実現される均衡は、ゲーム理論におけるナッシュ均衡として捉えられます。つまり、各企業は、相手の戦略を所与として、自社の利潤を最大化する戦略を選択し、その結果として互いに戦略を変更するインセンティブを持たない状態が均衡となります。

複占の特性

複占市場は、カルテルや完全競争市場と比較して、以下のような特性を持ちます。

カルテルとの比較: 複占企業は、互いに協力してカルテルを形成することで、より高い利潤を得ることができます。しかし、カルテルは、参加企業が合意を破ってより多くの生産を行おうとするインセンティブを持つため、維持が困難な場合があります。この状況は、ゲーム理論における囚人のジレンマとして知られています。
完全競争市場との比較: 複占市場は、一般的に、完全競争市場よりも価格が高く、生産量が少ない傾向にあります。これは、複占企業が市場支配力を持つため、価格を高く設定し、生産量を制限することで、より高い利潤を得ようとするためです。その結果、消費者余剰が減少し、経済全体の効率性が損なわれる可能性があります。この現象は、市場の失敗の一例として捉えられます。

複占の例

現実世界における複占の例としては、以下のようなものが挙げられます。

ソフトドリンク市場におけるコカ・コーラとペプシコーラ
ジェット機市場におけるエアバスとボーイング
映画フィルム市場におけるコダックと富士フイルム
通信カラオケ市場におけるDAM（第一興商）とJOYSOUND（エクシング）
日本のディスクロージャー・IRに関する情報加工市場における宝印刷とプロネクサス

これらの市場では、二社が圧倒的なシェアを占め、互いに競争しながら市場を支配しています。

関連語彙

独占：市場に供給者が一社しか存在しない状態
寡占：市場に少数の供給者が存在する状態
二大政党制：政治における複占の例

複占は、経済学において重要な概念であり、市場の構造や企業の行動を理解する上で不可欠な知識です。

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