西ドイツ国鉄403形電車

西ドイツ国鉄403形電車：高速鉄道への挑戦とルフトハンザ・エアポート・エクスプレス

西ドイツ国鉄403形電車（DB Baureihe 403）は、ドイツ連邦鉄道（現・ドイツ鉄道）が1970年代に導入した特急形交流電車です。当時、国内主要都市間を結ぶインターシティ（IC）網の拡充を目指し、航空機に対抗できる高速輸送を実現するために開発されました。

開発の背景

1960年代後半、西ドイツ国鉄はインターシティ網を構築しましたが、当初は機関車牽引方式や気動車方式を採用しており、最高速度は160km/hに留まっていました。そこで、航空機に対抗するため、最高速度200km/hに対応可能な動力分散式車両（電車方式）の開発に着手しました。これは、日本の東海道新幹線の成功に触発されたものでもありました。

しかし、ドイツは第二次世界大戦後、動力集中方式の高速車両の開発に重点を置いていたため、電車方式の高速車両の製作・運用の実績に乏しかったのです。そこで、本格的な量産に先立ち、試作車として403形を製作し、電車方式の高速車両の実用性を検証することになりました。

車両の特徴

403形は、一等制御電動車（403.0形）、一等電動車（404.0形）、一等食堂合造電動車（404.1形）の3形式で構成されています。基本編成は4両で、輸送需要に応じて中間車の増減や編成単位での併合運転も可能でした。

車体はアルミニウム合金製で、軽量化が図られています。外観は、空力特性を考慮した楔形の先頭部と、車体傾斜機能のために内傾させた断面形状が特徴的です。窓は熱線吸収ガラスを使用した固定式で、客用扉は低床プラットフォームに対応した折り畳みステップ付きのプラグドアを採用しています。

主要機器は、Sバーン用420形のものを発展させた設計で、各台車各軸に直流整流子電動機を装架する全電動車方式を採用しています。制御方式はサイリスタ位相制御で、交流15,000V 16 2/3Hzと交流25,000V 50Hzの2電源に対応します。また、車体傾斜方式を採用し、曲線通過時の速度向上を図っています。

客室は全車一等車で、403.0形は区分室、404.0形と404.1形は開放室という構成でした。404.1形の半室はビュッフェとして利用されていました。

運用と評価

403形は、1973年の完成後、長期の試験を経て、1974年からインターシティ4号線に投入されました。しかし、客車方式に比べて編成の増減が容易でない、整備コストが高いなどの問題があり、量産は見送られることになりました。1979年にはインターシティに二等車が連結されることになり、全車一等車で組成される本形式はインターシティ運用から撤退しました。

その後、403形は臨時列車や団体列車に充当されましたが、1982年からはルフトハンザ・エアポート・エクスプレスとして、フランクフルト空港とルール地方を結ぶ航空便代替列車として活躍しました。この際、車内には荷物置き場やバーが設置され、ルフトハンザのコーポレートカラーである白と黄色の塗装に変更されました。

1993年にエアポート・エクスプレスが運行を終了すると、403形も運用を離脱し、一部が保存鉄道団体に引き取られたものの、多くは解体されました。

403形は、西ドイツ国鉄にとって動力分散式の高速電車の開発における試金石となりました。インターシティ運用では成功を収められませんでしたが、ルフトハンザ・エアポート・エクスプレスとしての活躍は、多くの人々に強烈な印象を与えました。その技術は、後のICE 3などの高速電車に受け継がれています。

もう一度検索