西勝寺 (南砺市)

富山県南砺市坂上地区に佇む五谷山 西勝寺は、真宗大谷派に所属する寺院です。かつて江戸時代の五箇山地域において、「寺身分」と称される格式を持つ二つの寺院の一つであり、利賀地域全体における中心的役割を担っていました。今日においても、寺院そのものが南砺市の指定文化財として歴史的価値を認められています。

歴史の始まり

五箇山への浄土真宗の伝播は15世紀後半に遡り、当初は越前国の和田本覚寺が主導しました。遅れて五箇山東部の利賀谷に進出したのが吉藤専光寺であり、西勝寺は専光寺の末寺である道場としてその歩みを始め、やがて利賀谷の中心寺院へと成長していきます。

寺伝によれば、開祖明栄は本願寺8代蓮如に仕えた人物とされます。文明7年（1475年）に婦負郡杉原にあった真言宗の寺院跡を真宗寺院城生西勝寺と改め、翌文明8年（1476年）には蓮如の意向を受け、利賀谷の上畠に庵を建立しました。明栄は順調に門徒を増やしましたが、真言宗諦宗坊との対立から延徳2年（1490年）に襲撃を受け、命を落としました。長男の明覚が跡を継ぎ、明応3年（1494年）に下田に寺を建立し、この時初めて西勝寺と公称したと伝えられています。大永2年（1522年）には本願寺9代実如より本尊が下付され、この年が実質的な西勝寺の開基年とされています。

戦乱と再興

6代明恵の時代には、織田信長と石山本願寺の争いである石山合戦に深く関わりました。特に五箇山特産の塩硝（火薬の原料）の供給に協力した記録が残されています。石山合戦後、本願寺の内部対立では徹底抗戦を主張した教如（後の東本願寺始祖）を支持し、慶長6年（1601年）には教如から顕如上人真影を下賜されるなど、東本願寺の末寺として重要な地位を確立しました。慶長12年（1607年）には教如上人御寿像、元和8年（1622年）には太子七高僧真影と五谷山の山号が下付され、江戸時代初期には既に寺身分として認識されていたようです。

寺院としての確立と近現代

17世紀後半には、歴代住職が本山の法会で特定の席に着くことを許される「飛櫓」の地位を得た記録があります。20代明栄の時代の延享2年（1745年）には火災により本堂などを焼失しましたが、寺基を下田から現在の新田地内へと移し再建されました。文化4年（1807年）には親鸞絵伝が下付され、「五尊」（本尊、親鸞聖人御影、聖徳太子影像、七高祖影像、本願寺前往上人影像）を完備し、寺院としての体制が整いました。

近現代では、26代霊城の時代に明治維新を迎え、27代現明は寺務と共に考古学者としても功績を残しました。

末寺道場との関係

西勝寺は当初専光寺下の道場として始まりましたが、自らが寺身分を得た後、利賀谷や周辺地域の多くの道場を末寺としました。これらの末寺道場には、旧平村下梨集落の九里道場、戦国時代の一向一揆に関わる旗竿を所蔵していた歴史ある嶋村道場（後に分裂）、蓮如筆と伝わる名号を持つ来栖道場（庄川左岸に位置する特色を持つ）、火災を経て分離した高草嶺道場と夏焼道場、南砺市長を務めた人物を輩出した上畠道場、独立した建物を持たない内道場の形式を取る細島道場や上百瀬道場、そして江戸時代末期に創建された岩渕道場などがあります。これらの道場は、それぞれの地域における門徒たちの信仰生活の拠点として、西勝寺との関係を現代まで引き継いでいます。

西勝寺は、五箇山の厳しい自然の中で真宗信仰を守り伝え、地域社会の中心として栄えた歴史を持つ、非常に重要な存在と言えます。

近隣には、坂上八幡宮、うまいもん館、利賀ふれあいの森などがあります。

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