西南官話

西南官話（Southwestern Mandarin）

西南官話は、中国語の方言の一つで、主に中国西南部の広大な地域で話されています。具体的には、四川省、重慶市、雲南省、貴州省の大部分、湖北省西部、湖南省北西部、広西チワン族自治区、陝西省南部、甘粛省南部、江西省の一部、そしてミャンマーのコーカン特区で話されています。この方言は、上江官話または上江方言とも呼ばれることがあります。

話者数と分布

西南官話は、中国語の方言の中で最も多くの話者人口を有し、使用される地域面積も最大です。その話者数は約2億人に達し、中国の人口の約5分の1を占めています。これは、北方方言（官話）の話者人口の3分の1に相当し、湘語、粤語、閩語の話者人口の合計に匹敵するほどの規模です。

下位方言

西南官話は、さらに12個の下位方言に分類されます。

音韻の特徴

西南官話の音韻には、北京官話との間にいくつかの重要な差異が見られます。

声母

清音と濁音: ほとんどの地域では、北京官話と同様に清音と濁音の区別がありません。ただし、湖南省の一部地域ではこの区別が残っています。
唇歯音fと軟口蓋音x: これらの音の区別がありません。
歯茎鼻音nと歯茎音l: これらの音の区別がありません。
歯茎音とそり舌音: 多くの地域では、s, ʦ, ʦʰとʂ, ʐ, ʈʂ, ʈʂʰの区別がありません。ただし、一部の地域では北京官話のようにこれらの音を区別します。

韻母

歯茎鼻音nと軟口蓋鼻音ŋ: ほとんどの地域では、これらの音の区別がありません。ただし、両唇鼻音mは完全に[n]に合流することはありません。
軟口蓋鼻音ŋ末尾: 「i」,「e」の後ろでは、ŋの末尾が歯茎鼻音nとして発音されます。
「eng」の発音: ピンイン「b」「p」「m」「f」の後の「eng」は「ong」と発音されます。

声調

基本声調: 多くの地域では、陰平、陽平、上声、去声の4つの声調を持ちます。
入声: 古代入声は陽平に変化しています。ただし、約3分の1の地域では、依然として入声が保存されています。

参考項目

中国語
官話
北京官話
東北官話
冀魯[[官話]]
膠遼官話
巴蜀語: 西南官話が広まる以前に四川省一帯で話されていた中国語

まとめ

西南官話は、その広大な分布範囲と多数の話者人口を持つ、中国語の中でも特に重要な方言の一つです。音韻や声調において、北京官話とは異なる独自の特徴を持っており、中国語の多様性を理解する上で欠かせない存在です。

もう一度検索