西大泉町

東京都練馬区西大泉町：埼玉県新座市に囲まれた不思議な飛び地

東京都練馬区西部に位置する西大泉町は、その存在自体が謎めいた地域です。わずか0.002平方キロメートルという小さな面積で、東西南北を埼玉県新座市片山三丁目に完全に囲まれた、紛れもない飛び地となっています。練馬区本体からわずか数十メートルしか離れていないにもかかわらず、行政区域としては完全に切り離されています。まるで下駄の歯のように、新座市の住宅地に挟まれた独特の形状をしています。

複雑な歴史と飛地の謎

西大泉町がどのようにして飛び地となったのか、その経緯は明確には解明されていません。いくつかの説が提唱されていますが、いずれも確証はありません。

江戸時代の新田開発と明治以降の市町村合併: 新田開発や市町村合併の過程で、境界線が曖昧になり、結果として飛び地が形成されたという説です。
大名領地の残存: 江戸時代、大名領地が点在していた影響で、その一部が現在の西大泉町として残存したという説です。
練馬区農家の「出作り」: 練馬区の農家が新座市側に農地を所有していた（「出作り」）ことが原因であるという練馬区役所の見解もあります。
不動産業者による申請ミス: 不動産業者が新座市を練馬区と誤認し、申請したという説も存在します。練馬区はこの説を公式には認めていません。

1974年、開発業者が農地を宅地化しようとした際に、この飛び地の存在が明らかになりました。練馬区は、上水道やごみ収集などの行政サービス提供の困難さを理由に、新座市への編入を検討しましたが、住民の反対（不動産価値の低下への懸念）により実現していません。

現在の西大泉町

現在、西大泉町は閑静な住宅地として存在しています。一見、東京都と埼玉県の境界であるとは感じさせないほど、周囲の新座市との一体感があります。しかし、消火器に記載された区名や、新座市稲荷台自治会の宅地案内図に「東京都」とだけ記されている部分などから、その特殊な位置関係が分かります。

2023年5月1日現在、世帯数、人口は（具体的な数値は情報提供元に記載がありませんでした）、小中学校の学区は練馬区となります。住民は練馬区に住民税を納め、ごみ収集、教育など、多くの行政サービスを練馬区から受けています。しかし、上下水道は新座市、電気は東京電力パワーグリッド埼玉支店志木支社の管轄と、行政サービス提供においては複雑な様相を呈しています。

郵便番号は練馬区の番号（178-0066）を使用し、大泉郵便局が集配を担当します。また、衆議院議員総選挙の投票所は練馬区内のものとなります。電話の市外局番は03を使用しており、以前は埼玉県の番号を使用していた時期もあったようです。

交通面では、西武池袋線保谷駅が最寄りの駅で、バス路線も利用可能です。国勢調査や経済センサスによると、就業者数や事業所数も少ないことから、静かで落ち着いた地域であることが伺えます。

まとめ

西大泉町は、その歴史的経緯、地理的特性、そして住民の生活様式において、極めて特異な存在です。その成り立ちには謎が多く、行政サービスの提供においても工夫が必要な地域ですが、住民の方々は飛地であることに不便を感じずに暮らしているようです。これからも、この小さな飛び地は、東京都と埼玉県、そして練馬区と新座市の不思議な関係性を象徴する存在であり続けることでしょう。

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