西尾駅

愛知県西尾市住吉町にある名古屋鉄道（名鉄）西尾線の西尾駅（駅番号GN10）は、地域の中心駅として全ての列車が停車する重要な駅です。かつては駅に隣接して西尾車庫も設けられていました。この駅の歴史と現在の姿を見ていきましょう。

開業から黎明期

西尾駅の歴史は、1911年（明治44年）10月30日に岡崎（岡崎新駅）と西尾町を結ぶ西三軌道が開通したことに始まります。当初は現在地よりも西側の永吉町（現在の吾妻町あたり）に終着駅として開業しました。この鉄道は翌年、西尾鉄道と名前を変え、1914年（大正3年）には平坂線、1915年（大正4年）には吉田線が延伸されたことで、西尾駅は岡崎、平坂、吉田を結ぶ路線の結び目となりました。

開業当初、西尾駅は西尾町の中心市街地から少し離れており、中心街に近い天王門駅の方が利用者数では上回っていました。このため、西尾町は駅へのアクセス改善のために道路整備計画を進めました。当時は軌間762mmの蒸気機関車が走る鉄道でしたが、輸送量の増加に伴い、大正中期には軌間を1067mmに広げ、電化する計画が検討されます。駅舎も手狭になり、1925年（大正14年）7月には旧駅舎の北側に塔屋付きの2階建てとなる2代目駅舎が完成。駅舎の2階には西尾鉄道の本社事務所も置かれました。

資金不足から電化改良計画は思うように進みませんでしたが、大正末期になると、西方からは電化された三河鉄道、北方からは愛知電気鉄道（愛電）傘下の碧海電気鉄道（碧電）が西尾鉄道のエリアに進出してきました。会社の将来に危機感を覚えた西尾鉄道の経営陣は愛電との合併を選び、1926年（大正15年）12月に合併が成立。西尾鉄道は愛電西尾線の一部となり、改良計画は愛電に引き継がれました。

現在地への移転

愛電は、西尾駅から天王門駅にかけての市街地区間が曲線が多く、改軌に必要な線路用地を確保するのが難しい状況でした。一方、西尾町では1925年（大正14年）3月から東郊外での区画整理計画が進んでいました。愛電はこの町の都市計画と連携し、区画整理された土地に線路を移設することを決めます。このルート変更により、急曲線区間にあった天王門駅は廃止され、西尾駅も東の現在地へ移ることになりました。

新築から間もない2代目駅舎の移転には反対意見もあり、駅西側の商店街からも移転に反対する陳情が出されましたが、町民の多くは将来を見据えた移転に賛成でした。西尾町、区画整理組合、愛電の間では、移転費用の分担や旧駅舎の取り扱い、用地提供などに関する具体的な契約が結ばれました。

西尾駅の移転を含む周辺の線路変更は、1928年（昭和3年）10月1日に実施されました。移転後の線路は、吉良吉田方面はカーブが緩やかになりましたが、平坂方面は区画整理地区を出てからカーブするため、旧線より急な曲線となりました。同じ日には碧海電気鉄道も西尾駅まで延伸開業し、西尾駅は愛電と碧電の共同使用駅となりました。開業当初は碧電側の西尾口駅（仮駅）で乗り換えが必要でしたが、翌1929年（昭和4年）4月には残っていた区間の電化が完了し、岡崎新駅方面への直通運転も開始。西尾駅は四方向へ向かう列車の運転拠点となり、新たな車庫も設けられました。特に1935年頃には、毎時53分頃に全ての方面からの列車が駅に集結するダイヤが組まれていました。

移転先に建てられた3代目駅舎は、急勾配の屋根とドーマー窓が特徴の洋風建築で、構内には食堂や売店も備えていました。駅前は区画整理に合わせて整備され、放射状に道路が延びて新しい市街地が形成される基盤となりました。元の場所に残った2代目駅舎は契約通り西尾町に譲渡され、1930年（昭和5年）からは西尾警察署として使われました。

その後、1935年（昭和10年）に愛知電気鉄道と名岐鉄道が合併して名古屋鉄道（名鉄）が誕生し、1944年（昭和19年）には碧海電気鉄道も名鉄に合併されました。これにより、西尾駅に乗り入れる鉄道会社は名鉄のみとなりました。この間に、西尾駅と岡崎新駅を結ぶ区間は不要不急線として1943年（昭和18年）に休止され、1959年（昭和34年）に廃止されました。また、平坂支線となった西尾駅と港前駅の間も翌1960年（昭和35年）に廃止され、西尾駅の路線は現在の今村駅方面から吉良吉田駅方面へのルートに集約されました。この区間は、平坂支線の廃止と同じ日に電圧が直流1500Vに引き上げられ、名古屋本線との直通運転が始まりました。

近代的な駅への改築と高架化

1973年（昭和48年）、3代目駅舎は取り壊され、跡地に鉄筋4階建ての総合駅ビルが建設されました。4代目駅舎は駅ビル1階に設けられ、同年末から使用が開始。駅ビルにはキーテナントの名鉄ストアーをはじめとする店舗がオープンし、地域商業の中心となりました。

駅ビルが完成した後、西尾駅とその周辺約2.7km区間の高架化が次の大きな計画として進められました。これは1974年（昭和49年）に都市計画として決定され、1975年度には一部区間の仮線敷設工事が始まりました。しかし、用地の確保などで地元との調整が難航し、さらにオイルショックの影響もあって工事は一時中断しました。仮線敷設工事が再び動き出したのは1986年（昭和61年）になってからです。

駅周辺の高架化は1989年（平成元年）7月に完成しました。これにより、地域内の13ヶ所の踏切が解消され、21ヶ所で道路との立体交差が実現し、交通の流れがスムーズになりました。高架化後も西尾駅周辺は単線でしたが、駅の北側約1.3kmの高架橋は将来の複線化に対応できる構造で建設されていました。この構造を活かし、2008年（平成20年）6月には西尾駅と西尾口駅間の約600m区間が複線化されました。

高架化が完成すると、高架下に5代目となる駅舎が設けられ、駅の機能は駅ビルからこちらへ移転しました。駅ビル（当時は名鉄パレ西尾百貨店）はその後内装が変更されましたが、2013年（平成25年）に閉店。耐震性の問題から解体され、現在その跡地では再開発が進められています。

現在の駅構造と利用状況

現在の西尾駅は、島式ホーム1面2線を持つ6両編成対応の3層構造の高架駅です。駅長が配置されており、西尾線と蒲郡線の主要駅として両線の駅を管理しています。改札口、自動券売機、窓口は2階にあり、ホームとエレベーター専用改札口は3階に設けられています。エレベーター専用改札口の近くには自動精算機がありますが、きっぷ売場はないため、乗車券を購入する場合は一度2階に降りて購入し、再びエレベーターで3階へ上がる必要があります。

列車の運行に関しては、西尾駅から吉良吉田方面へは、朝と深夜を除き普通列車の設定が少なく、代わりに各駅に停車する急行列車が30分間隔で運転されています。平日朝には吉良吉田始発の特急列車も1本設定されており、これも西尾駅までは各駅に停車します。2008年 6月29日以降、西尾駅での列車の種別変更は行われなくなりました。

西尾駅は、名鉄西尾線内で新安城駅を除くと最も利用者が多い駅です。近年の1日平均乗降人員は7,000人台ですが、過去には1万人を超える利用がありました。駅前にはバスターミナルや駐輪場が整備されており、特に西尾市内にある高校への通学利用者が多く見られます。

西尾車庫

西尾車庫は、愛知電気鉄道が西尾駅を現在地に移転させた際に新設された車両基地です。1960年（昭和35年）に西尾線の架線電圧が1500Vに昇圧されるまでの間、西尾線を含む600Vで電化されていた路線の車両基地として機能していました。

駅周辺

駅前にはバスターミナルがあり、名鉄東部交通バスやコミュニティバス「六万石くるりんバス」が発着しています。

隣の駅は、名古屋本線方面が桜町前駅、吉良吉田方面が福地駅です。

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