西村式潜水艇

西村式潜水艇の概要

西村式潜水艇は、日本において開発された小型潜水艇で、主に海底調査や珊瑚採取を目的として設計されました。この潜水艇は、設計者西村一松によって1929年に台湾の基隆で初号艇が建造され、以降、様々な改良を施された後続艇が登場しました。

初号艇の特徴

初号艇の排水量は14トン、全長10メートル、中央部の直径は1.5メートルであり、最大潜水深度は300メートルに設定されました。動力源は蓄電池とモーターで、特に水中での航行に特化した設計が施されていました。また、作業用の装備として、マジック・ハンド、のぞき窓、投光器を搭載し、視界を確保しつつ様々な作業を行うことができたのです。

第2号艇の進化

第2号艇は1935年に三菱横浜造船所で建造され、容積や動力源の面で進化を遂げました。この艇は、蓄電池とモーターの他に、水上走行用にディーゼル機関を搭載し、排水量は24トン、長さは10.78メートル、直径は1.83メートルとなっています。最大潜水深度は350メートル、水中での速力は約3ノットで、行動時間はおおよそ1時間とされていました。

調査活動

第2号艇は、従来の潜水艦よりも遥かに深い位置まで潜れる能力を有していたため、海軍からの調査依頼を受けることもありました。例えば、1936年には戦艦河内の沈没事故現場の調査を行い、1939年には潜水救難作業にも従事しました。しかし、潮流の速い海域ではその運用には困難が伴いました。特に、水中での動力や操作性に制約があり、最大行動時間内に目的地への到達が難しいことが多かったのです。

潜水作業艇の改良

その後、海軍は第2号艇の欠点を克服するため、3746号艇と3747号艇を製造することになりました。これらの艇は、落下バラストや浮力タンクの導入などで予備浮力を強化し、より安全かつ効果的な潜水作業を可能としました。特に、海水ジェットやサクションポンプが装備され、砂掘り作業に特化した設計にもなっています。

複雑な戦時の運用

戦時中は、海底調査や救難作業に関わる資料が乏しく、詳細な活動内容はあまり知られていません。しかし、3746号艇は1940年には引き続き伊63の浮揚作業に度々従事し、1943年には戦艦陸奥の調査にもあたりました。ただし、陸上艦艇の調査はそれ以上に困難であり、陸奥の調査では突出した部分に艇が引っかかって一時行動不能になる事態も起こり、ときに重大なリスクを伴うものであったことが記録されています。

戦後の技術的貢献

また、西村式潜水艇のデータは、後の水中音響技術やソナー開発に大いに貢献しました。この技術的知見は、陸軍が独自に水中探信儀や水中聴音機の開発を行う際に非常に価値がありました。特に、音響伝搬についてのデータは当時の潜水艦技術において基盤となり、将来的な活動にも影響を与えました。

結論

西村式潜水艇は、日本の潜水艇技術の重要な一環として位置づけられており、戦後もその技術的遺産が評価されています。西村自身は戦後、様々な困難に直面しましたが、潜水艇の設計を続け、新たな挑戦を試みようとしました。残念ながら新しい艇の開発は未完成に終わりましたが、これまでのこれらの潜水艇が日本の海洋研究に果たした役割は計り知れません。

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