西陵古墳

西陵古墳：巨大前方後円墳が語る古代の謎

西陵古墳は、大阪府泉南郡岬町淡輪に位置する前方後円墳です。国の史跡に指定されており、淡輪古墳群の中でも最大規模を誇り、全国でも28位に入る規模を有しています。その全長は約210メートルにも及び、5世紀前半頃の築造と推定されています。別名「西二山在古墳」とも呼ばれます。

大阪湾を見下ろす巨大古墳

大阪湾に面した台地上に築かれた西陵古墳は、その壮大な規模から古代の人々の高度な技術力と社会構造を垣間見ることができます。東に位置する淡輪ニサンザイ古墳（宮内庁治定五十瓊敷入彦命墓）や、現在は消滅してしまった西小山古墳とともに、淡輪古墳群を形成しています。「二山在」という別名は、「ミササギ（陵）」の転訛と考えられています。

墳丘と副葬品：古代の葬祭文化

西陵古墳の墳丘は前方部を北東方に向けて築造され、3段構造となっています。前方部の幅は約100メートル、高さは約14メートル、後円部の直径は約115メートル、高さは約18メートルに達します。墳丘の西側くびれ部には方形の造出が設けられており、墳丘全体は葺石で覆われ、円筒埴輪や朝顔形埴輪、さらには蓋形、盾形、短甲形、家形といった様々な種類の器材埴輪が整然と並べられていたことが分かっています。墳丘の周囲には幅15～35メートルの周濠が巡らされていますが、その本来の姿は不明な点が多いです。周濠の外側には、かつて3基の陪塚が存在したとされ、そのうち1基は消滅してしまっています。

埋葬施設は明確には確認されていませんが、竪穴式石室に凝灰岩製の長持形石棺が納められていたと推測されています。かつては後円部墳頂で石棺の蓋石が露出していましたが、国の史跡指定に伴い埋め戻されました。出土した埴輪の特徴から、築造年代は西暦420年から440年頃と推定されています。淡輪古墳群の大型古墳の中では、西小山古墳や淡輪ニサンザイ古墳よりも先に造られたとみられています。

独特の技法と紀氏との関わり

西陵古墳を含む岬町の大型古墳群では、円筒埴輪に「淡輪技法」と呼ばれる独特の技法が見られます。この技法は、和歌山平野の木ノ本古墳群にも見られることから、紀伊地方の有力氏族である紀氏との強い関わりがあったと考えられています。

被葬者：謎に包まれた人物

西陵古墳の被葬者については、はっきりとしたことは分かっていません。地元の経済力だけでは築造が困難な規模であることから、紀氏の関与が推測されています。いくつかの説があり、『日本書紀』に登場する5世紀後半の将軍・紀小弓を被葬者とする説が有力なものの1つです。また、『和泉志』では紀船守、『泉州志』では紀小弓か紀船守のどちらか一方、『南游紀行』では五十瓊敷入彦命とする説など、様々な説が存在しています。これらの説の信憑性については、更なる研究が必要とされています。

陪塚と文化財

西陵古墳の北方には、第一古墳と第二古墳と呼ばれる2基の円墳があり、これらは西陵古墳の陪塚として考えられています。これらの古墳も西陵古墳と共に国の史跡に指定されています。かつては、線路の敷設工事によってもう1基の陪塚が破壊されてしまったと伝えられています。その際、土器や鉄器などの遺物が発掘されました。

西陵古墳とその陪塚は、1922年（大正11年）に国の史跡に指定され、現在も歴史的遺産として保護されています。その雄大な姿は、古代日本の歴史と文化を今に伝えています。

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