紀小弓

紀小弓（き の おゆみ）とは

紀小弓は、古墳時代に活躍した豪族・紀氏の一員です。紀田鳥、または紀白城、紀角の子とされており、子には大磐がいます。彼は、雄略天皇の時代に新羅征伐の遠征に参加し、その生涯を終えました。

新羅遠征と最期

雄略天皇9年（465年）、紀小弓は、蘇我韓子、大伴談、小鹿火宿禰らと共に新羅征伐のために朝鮮半島へ渡りました。出陣前、彼は妻を亡くしたばかりで身の回りの世話をしてくれる者がいないことを大伴室屋に伝え、天皇の計らいで吉備上道采女大海が与えられました。新羅での戦いでは、目覚ましい活躍を見せましたが、残兵の抵抗に苦戦し、大伴談らが戦死。紀小弓自身も新羅で病死するという悲劇に見舞われました。

葬儀と功績

紀小弓の死後、大海は喪に服すため日本へ帰国しましたが、埋葬場所が分からず大連の室屋に相談しました。室屋の奏上により、天皇は紀小弓の功績を称え、紀氏と大伴氏の領地が隣接する和泉国日根郡淡輪村に墓を築くよう指示しました。大海はこれに喜び、6人の家人を室屋に献上したと伝えられています。

小鹿火宿禰のその後

紀小弓と共に新羅へ派遣された小鹿火宿禰は、彼の喪に服すために帰国後、角国（周防国都濃郡）に留まりました。彼は、八咫鏡を室屋に献上し、「紀卿（小弓の息子）と共に天朝に仕えることはできない」として、角国への在留を願い出ました。そして、小鹿火は角臣の祖先となったとされています。

紀氏と大伴氏の関係

紀氏の本拠地は奈良盆地西南部の平群郡であり、大伴氏の本拠地である奈良盆地東南部の磯城郡・十市郡とはやや離れています。しかし、大伴氏が摂津国や和泉国にも勢力を拡大しており、紀氏も紀伊国を本拠地としていたことから、両氏の勢力圏は一部重なり合っていました。岸俊男の研究によると、紀伊名草郡・那賀郡で両氏の勢力分布が重複することが分かっており、淡輪は両氏の勢力圏の接点であったと考えられています。

淡輪の古墳群

淡輪には、垂仁天皇の皇子である五十瓊敷入彦命の墓とされる宇度墓のほか、西陵古墳や西小山古墳などの前方後円墳が存在します。これらの古墳は、応神天皇陵や仁徳天皇陵以降のものと推定されており、西小山古墳出土の金銅装眉庇付冑には、大陸系・半島系の技法が用いられていることが末永雅雄の研究で明らかにされています。

まとめ

紀小弓は、新羅遠征で命を落としましたが、その功績は後世に語り継がれ、彼を祀る墓は、紀氏と大伴氏の勢力圏の接点である淡輪に築かれました。この出来事は、当時の豪族間の関係や勢力分布を理解する上で重要な手がかりとなります。

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