要劇料

要劇料についての詳細

要劇料（ようげきりょう）は、日本の律令制度において、官人に支給される特別手当の一種です。この制度は、官人が厳しい職務に従事していることを考慮して設けられましたが、法令にはその詳細な規定が見当たりません。初めての支給は養老3年（719年）に行われた際に、特に激務を担う官人に対して銭が配布されたことにさかのぼります。

この制度の初期においては、誰が支給の対象となるかは明らかではありませんが、主に京に置かれている職事官に対して、月単位で銭が支給されていたと考えられています。対照的に、番上官には「番上粮」と称される米が支給されていました。通常、職事官には月料、番上官には大粮が支給されていましたが、要劇料や番上粮は現在の特別手当と同様の性質を持っていたと見受けられます。

大同3年（808年）から翌年にかけて、官人の給与制度に革新がもたらされました。この改革の結果、月料の支給範囲は縮小され、観察使（参議）以外の職事官にも要劇料が支給されるようになりました。特筆すべきは、月料と要劇料の間にあった区別が薄れ、官位に関係なく、支給は1日あたり2升の米に変更されたことです。従来の銭での支給は停止され、支給の是非は出勤日数を基に判断されるようになりました。これにより、要劇料は特別手当としての位置付けを失っていきます。

その後、全ての長上官と番上官は、官職ではなく職務に応じた月料、要劇料、番上粮のいずれかが、1日あたり2升の米として支給されることとなりました。特に番上官の場合は、月料と番上粮をそれぞれ1升ずつ受け取る形式が採用されました。この変化に伴い、要劇料と月料の違いはますます曖昧となり、要劇月料として統一されるようになりました。

要劇料の財源は、毎年各地から大炊寮に納められる年料舂米が使われました。諸官司は毎月4日、前月の実績を太政官に報告し、その後太政官は必要な米の量を記載した文書を宮内省に発せられました。そして、大炊寮からはその月の13日に米が配給されたのです。

しかし、9世紀の後半には年料舂米の収納が遅れる事態が発生しました。これを受けて元慶3年（879年）には「元慶官田」が設置され、これによって不足を補う措置が取られました。その2年後には、一部が諸官司に再分配され、要劇料の財源となる「要劇田」と名付けられました。要劇田は後に、諸司田や諸司領の原型へと発展していくことになります。

参考文献

• - 早川庄八「要劇料」『国史大辞典 14』（吉川弘文館 1993年）
• - 勝浦礼子「要劇料」『日本史大事典 6』（平凡社 1994年）
• - 森田悌「要劇料」『平安時代史事典』（角川書店 1994年）
• - 俣野好治「要劇料」『日本歴史大事典 3』（小学館 2001年）
• - 阿部猛「要劇料」『日本古代史事典』（朝倉書店 2005年）

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