諸司領

諸司領（しょしりょう）について

諸司領とは、太政官を初めとする律令制の中央官司に属する所領のことを指します。この所領からの収穫物は官司の経費や官人への給与の支払いに充てられました。律令制における中央財政は、主に大蔵省に集められる庸・調と、大炊寮に集まる年料舂米によって支えられていました。

財源の背景

官人への給与は、位禄や季禄、時服が庸・調から支給され、さらに月料や要劇料、番上粮は年料舂米から支出されていました。しかし、奈良時代の後期に入ると、庸調の収入が減少が進み、これにより中央財政の厳しさが増すこととなりました。その結果、官司の経費や官人への給与の負担が地方に転嫁され、代替物の確保が求められるようになり、国衙の料米からの捻出が試みられましたが、解決には至らず、逆に地方財政の更なる悪化を招くこととなったのです。

平安時代の改革

平安時代の元慶3年（879年）には、官田が設置され、官司の経費を賄うための取り組みが行われました。この「元慶官田」は、2年後にはその一部が分割されて直接官司に与えられ、それぞれの官司が独自に財政を運営する形となりました。これにより、要劇田や諸司田と呼ばれる所領が生まれ、諸司領の原型となります。各官司はその後、必要な費用や物資を料国という諸国に割り当てる料国制を採用しました。

しかし、平安時代末期に入ると、戦乱の影響から各国から供給される料物が急速に減少しました。これに対抗するため、諸国に便補保を設置したり、供御人や商人から「上分」と名付けた税金を徴収し、率分銭や関銭などの手段で財源を確保しようとしたのです。特に、内蔵寮や内膳司、大炊寮、造酒司が、当時の中心地であった京都における流通や販売に関連して徴税に従事していました。

多様な諸司領

また、諸国には公田や乗田から派生した太政官厨家領や大炊寮領、氷室を基とする主水寮領、そして杣を背景とする修理職領など、様々な形態の諸司領が存在していました。官司請負制の発展と共に、特定の公家が特定の官司の長として就任することが一般的になり、これにより公家の私領と所属官司の所領の境界が曖昧になるケースも見受けられました。

もちろん、諸司領はその性質上、官司の運営に必要な収益を捻出することが前提であり、官司の長が交代する場合には、諸司領は新しい長に引き渡される必要がありました。また、諸司領は天皇に奉仕するものであり、朝廷の運営にも利用されていました。このため、業務外の利用が発覚した場合は、天皇によって官司の長が解任され、その領土も没収されることがあったのです。

このような中で、諸司領は律令制度の中で重要な役割を果たしており、中央官司の運営や地方財政との関係を形成していくこととなります。

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