親分&子分ズ

親分＆子分ズは、1969年に音楽シーンに登場した日本のカレッジ・フォークグループです。このグループは、早稲田大学に在学していた入月清文、赤井正、天野近の3名によって結成されました。彼らはキングレコードからデビューし、特にユーモアあふれるコミックソングを得意としていました。

グループがプロデビューするきっかけとなったのは、日本テレビ系列で放送されていたオーディション番組「あなた出番です」への出演でした。この番組での合格を経て、彼らのプロとしての活動がスタートします。デビューシングルとしてリリースされたのは「海はふるさと」という楽曲で、これは元々トニーズというグループが歌ってヒットした楽曲のカバーでした。

当時のカレッジポップスやフォークソングが盛んだった時期において、親分＆子分ズも精力的にライブ活動を行いました。特に、1969年10月8日には、早稲田大学邦文速記研究会が主催した「Folk Concert in Autumn Evening」というイベントに出演しています。このコンサートは共立講堂を会場として開催され、親分＆子分ズはシュリークス、パードリックス、小林啓子といった、当時人気を集めていた他のフォークアーティストたちと共にステージに立ちました。

また、同年の1969年には、キングレコードから発売されたクリスマスの企画アルバム『フォークでクリスマス～Christmas on Campus』にも参加しています。このアルバムは、当時の学生たちが歌うクリスマスの歌を集めたもので、親分＆子分ズはアルバムに計4曲を提供しました。特に「赤鼻のトナカイ」は、彼らが参加した楽曲としてアルバムの収録曲リストに名前が確認できます。

親分＆子分ズの活動の中で、最も広く知られることとなったのが、1970年にリリースされた楽曲「遠山の金さん」のヒットです。この曲は、俳優中村梅之助が主演を務めた人気テレビ時代劇『遠山の金さん捕物帳』（1970年7月～1973年9月放送）のエンディングテーマとして使用されました。番組の締めくくりを飾る楽曲として、多くの視聴者に親しまれました。

「遠山の金さん」は、作詞を名村宏が、作曲を小川寛興が担当した楽曲です。メロディは小唄や都々逸といった日本の伝統的な音階を思わせる和風の雰囲気を持っており、当時のフォークソングとしては非常に個性的な作品でした。この和風のメロディに、親しみやすく温かみのある男性コーラスを重ね、さらにフォークギターやオルガンといった洋楽器のサウンドを加え、楽曲の最後を尺八の音色で締めくくるという、当時としては非常に大胆かつ凝ったアレンジが施されていました。この独特のサウンドが、時代劇の世界観とも絶妙に調和し、楽曲のヒットに繋がりました。キングレコードから1970年4月20日にシングル盤として発売され、演奏時間は2分16秒でした。

この楽曲「遠山の金さん」は、時を経て、フジテレビ系列で放送されていた人気バラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげです』の中で、コント「保毛太郎侍」のテーマ曲として替え歌にされて使用されたことでも話題となりました。これにより、世代を超えて楽曲の知名度が広がる一因ともなりました。

現在、親分＆子分ズの楽曲は、当時の音楽を振り返る様々なコンピレーションアルバムで聴くことができます。カレッジポップスの歴史を網羅した『カレッジポップス・クロニクル』（東芝EMIより通信販売されている6枚組アルバム）には、彼らの初期の代表曲である「海はふるさと」、「ねててくれお日さま」、「クレオパトラの華麗な旅」の3曲が収録されています（Disc6）。また、ヒット曲「遠山の金さん」は、『TV時代劇グレイテスト・ヒッツ』（テイチクより発売）のような時代劇関連のコンピレーションアルバムに収録されており、現在でも容易に耳にすることができます。さらに、『フォークでクリスマス』アルバムへの参加曲も、当時の音源として貴重な記録となっています。

親分＆子分ズは、活動期間は比較的短かったものの、早稲田大学出身というバックグラウンドと、コミックソングや時代劇主題歌といった個性的な活動内容で、1960年代末から1970年代初頭の日本の音楽シーン、特にカレッジポップスという文脈において記憶されるグループです。特に「遠山の金さん」は、その独特のサウンドと強いタイアップ効果により、彼らの名前を後世に伝える代表的な一曲となっています。

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