ヤン・ドンケル・クルティウス

ヤン・ヘンドリック・ドンケル・クルティウス

ヤン・ヘンドリック・ドンケル・クルティウス（Jan Hendrik Donker Curtius, 1813年4月21日 - 1879年11月27日）は、江戸時代末期に活躍したオランダの外交官であり、最後のカピタン（オランダ商館長）を務めた人物です。彼は日本の開国に深く関与し、日蘭関係の発展に大きく貢献しました。

生涯

1813年、オランダのアーネムで生まれたクルティウスは、1835年にオランダ領インドネシアのジャワ島に渡り、バタヴィア高等法院の評定官や高等軍事法院議官を歴任しました。その後、1852年7月に長崎に到着し、同年11月には出島のオランダ商館長に就任しました。1855年8月には駐日オランダ理事官も兼務することになります。

クルティウスは、長崎奉行との交渉を任され、アメリカが砲艦外交によって日本に開国を迫ろうとしていることを、オランダ風説書とともに「別段風説書」として江戸幕府に伝えました。その際、アメリカとの交渉前にオランダとの通商条約を締結すべきと進言しましたが、交渉は不調に終わりました。

ペリー来航後、幕府が開国政策に転じると、クルティウスは幕府の要請に応じ、スンビン号（後の観光丸）の寄贈を手配し、ヤパン号（後の咸臨丸）とエド号（後の朝陽丸）の軍艦2隻を発注しました。また、長崎海軍伝習所の設立や、オランダ海軍士官の招聘にも関与しました。これらの功績によって日本側の信頼を得たクルティウスは、1856年1月30日に日蘭和親条約の締結を実現させました。

さらに、1856年8月10日にはイギリス使節の来日を伝え、列国との通商条約締結を幕府に勧告し、1857年10月16日には日蘭追加条約を締結しました。この条約は、自由貿易関係への移行を前提とした貿易規制の緩和を含む、日本が外国と結んだ最初の通商条約でした。

1858年8月17日には、日米修好通商条約締結から19日遅れて、ほぼ同等の内容の日蘭修好通商条約を締結し、自由貿易が認められました。また、長崎奉行との交渉により踏み絵の廃止を実現するなど、開国後のオランダ最初の駐日外交官として、日蘭間の交渉役を務めました。

この交渉の中で、クルティウスは日本人にオランダ語を教える一方で、自らも日本語の研究を進めました。1857年には日本語の文法書『日本文法稿本』を著しています。また、日本初の有線式実用長距離電信実験を成功させ、電信技術を日本に導入しました。

1860年に日本を離れて帰国したクルティウスは、日本滞在中に収集した書籍をライデン大学に寄贈し、それらは後のオランダにおける日本研究の基礎文献となりました。1879年11月27日、故郷のアーネムで生涯を閉じました。

クルティウスの功績は、日本の開国と近代化に大きく貢献しただけでなく、日蘭関係の発展に多大な影響を与えました。彼の活動は、両国の友好関係を深める上で重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

参考文献

『幕末出島未公開文書 ドンケル・クルチウス覚え書』（フォス美弥子編訳、新人物往来社、1992年、ISBN 440401905X）

関連項目

カピタン
出島
安政二年「日蘭条約書」 - 出島商館長として署名あり。国の重要文化財。
明治維新以前に日本に入国した欧米人の一覧
ヨハネス・ポンペ

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