観光学

観光学とは

観光学は、観光に関する様々な現象を研究対象とする学際的な学問です。経済の発展とともに人々の旅行が増加し、観光が社会に大きな影響を与えるようになったことを背景に、より良い観光のあり方や、観光による環境問題などの課題解決を目的として研究が行われています。

学問としての観光学

観光学は、社会学、経済学、経営学、歴史学、統計学、地理学、人類学、心理学、都市計画学など、既存の様々な学問分野を応用して観光現象を分析する学際的な学問です。そのため、単一の学問として体系化することは難しいという意見もあります。

しかし、欧米諸国では「Tourism study」や「Tourism research」として確立されており、観光学の研究が進められています。日本では、地理学や社会学、文化人類学などの分野で観光の研究が行われてきましたが、欧米に比べると体系化が遅れているのが現状です。

観光学の研究対象は多岐に渡り、観光情報、観光産業、観光経済、観光資源、観光政策、観光施設、観光消費、観光心理、観光地理学、観光文化など、観光に関わるあらゆる側面を研究対象としています。また、エコツーリズムやソーシャルツーリズム、グリーンツーリズム、ヘルスツーリズム、メディカルツーリズムなど、近年注目されている観光の形態も研究対象となっています。

日本における観光学

日本では、1963年に東洋大学短期大学部に観光学科が設置されたのが始まりです。その後、1967年には立教大学に観光学科が設置され、1998年には日本初の観光学部が誕生しました。現在では、いくつかの大学に観光学部が設置されていますが、まだその数は多くありません。

近年、入学者数の減少に悩む私立大学が、起死回生策として観光学部を設置するケースが増えています。また、2007年には和歌山大学と琉球大学に観光学科が設置され、2008年には学部に昇格しました。さらに、2007年には北海道大学大学院に観光学の研究科が、2008年には首都大学東京（現・東京都立大学）大学院に観光科学教室が設置され、今後の発展が期待されています。

世界の観光学研究

海外では、アメリカのコーネル大学ホテル経営学部やセントラルフロリダ大学ローゼン・ホスピタリティ経営学部、イギリスのサリー大学、スイスのEcole Hoteliere de Lausanne、アジアではジェームズクック大学観光学部や香港理工大学などが、観光学研究の代表的な大学として知られています。これらの大学では、専門の学部を設けて観光学の研究を積極的に行っています。

人流学

近年では、観光と観光以外を科学的に区別することの意義が薄れてきており、人の移動に着目した「人流学」という新たな学問分野も提唱されています。人流学は、観光を含めた人の移動を、脳の働きなど科学的な視点から分析する研究分野です。今後の観光学の発展に大きな影響を与える可能性を秘めています。

まとめ

観光学は、観光という現象を多角的に分析する学際的な学問です。経済発展に伴い、観光は社会に大きな影響を与えるようになり、観光学の重要性はますます高まっています。観光学は、観光に関する様々な課題解決を目指し、持続可能な観光の実現に貢献することが期待されています。

参考文献

尾家建生・金井萬造『これでわかる！　着地型観光』（学芸出版社、2009年）
岡本伸之編『観光学入門』（有斐閣、2001年）
鈴木忠義『現代観光論』（有斐閣、1984年）
須藤廣・遠藤英樹『観光社会学　ツーリズム研究の冒険的試み』（明石書店、2005年）
高寺奎一郎『国際[[観光]]論』（古今書院、2006年）
長谷政弘『観光学辞典』（同文館出版）
長谷政弘『観光マーケティング―理論と実際―』（同文館出版）
溝尾良隆『観光学　基本と実践』（古今書院、2003年）
AERA MOOK 『観光学がわかる。』（朝日新聞社、2002年）
寺前秀一『観光政策学』（イプシロン企画出版、2007年）

関連項目

異文化コミュニケーション
観光基本法
観光白書
観光学部
日本観光研究学会
総合観光学会
日本観光学会
日本国際[[観光]]学会
観光学術学会
観光学者
* The Euro-Asia Tourism Studies Association

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