角髪

角髪（みずら）とは

角髪（みずら）は、古代日本において子供たちがしていた髪型、また、その髪型を結った子供自身を指す言葉です。美豆良（みずら）、総角（あげまき）とも呼ばれます。江戸時代には元服前の少年の髪型として角前髪（すみまえがみ）がありましたが、この記事では上代の角髪に焦点を当てて解説します。

角髪の分類

角髪には「上げ角髪」と「下げ角髪（お下げ）」の2種類があります。一般的に知られているのは上げ角髪で、埴輪などにも多く見られます。下げ角髪は貴人の髪型とされ、より格式の高いものでした。本記事で解説する結い方も、主に上げ角髪のものです。

角髪の結い方

角髪は、髪全体を中央で二つに分け、耳の横でそれぞれを括って垂らすことで作られます。

輪を作るタイプ: 括った髪をそのまま輪にするか、輪の中心に余った髪を巻きつけて8の字型にするものがあります。このうち、輪が二つあるタイプがより古い形とされ、埴輪などによく見られます。
輪が一つタイプ: 奈良時代に入ると、輪が一つだけのものが主流になります。このタイプには、毛先を納めるものと、そのまま垂らすものとの2種類があります。
総角: 角髪の変形として、耳の上辺りで角型の髻（もとどり）を二つ作った総角があります。これは主に少女が結いました。

神話における角髪

古代の神話では、角髪は男性だけでなく、女性も結っていました。『古事記』には、イザナギの黄泉下りやスサノオの大蛇退治の物語で、男性が角髪に櫛を挿している描写があります。また、アマテラスとスサノオの誓約の場面では、女神のアマテラスが角髪を結う、呪術的な異性装を思わせる記述も見られます。

『日本書紀』では、角髪は髻（もとどり）と表記されています。

角髪の語源

「みずら」という言葉の語源には諸説あります。

「耳に連なる」説: 最も有力な説で、髪の形状が耳に沿っている様子を表しているとされます。
「美面」説: 筑波大学の増田精一教授は、「みずら」は「美面（みつら）」から来た言葉で、美称である「ミ」がついたものと提唱しています。また、モンゴルのお下げ文化が「いい面」を意味する言葉と関連している可能性を指摘し、角髪のようなお下げ文化が大陸の北方文化にみられることとの関連を考察しています。

角髪に関する備考

1983年3月には、茨城県の武者塚1号墳（7世紀後半）から、ほぼ完全な形の左側の角髪（長さ約10cm）が出土しました。出土後、カビが生えたため、滅菌処理後に冷凍保存されています。

関連項目

鈴木Q太郎: 長髪を角髪風にして「卑弥呼様ー!」と叫ぶギャグを持つ人物。
* チョンガー: 日本髪の分類の一つで、角髪とは異なる髪型。


このように、角髪は古代日本の文化を理解する上で重要な要素の一つであり、その結い方や歴史、神話における役割など、さまざまな側面から興味深い考察が可能です。

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