計量学

計[[量]]学とは

計[[量]]学（metrology）は、測定、計測、度[[量衡]]を包括的に研究する学問分野です。単に「測る」という行為にとどまらず、その理論的背景から、実際に測定を行うための技術、そして測定結果の信頼性を保証する仕組みまで、幅広く扱います。

計[[量]]学は、古代ギリシア語の「μέτρον（metron, 秤、物差し）」と「λόγος（logos, 言葉、論理）」を語源とし、測定の行為そのものを指すこともあります。しかし、それぞれの分野で測定技術が独自に発展したため、日本語の用語は統一されておらず、「測定学」、「計測学」、「度[[量衡]]学」など様々な訳語が存在します。本稿では、産業技術総合研究所計[[量]]標準総合センターの計[[量]]用語集に準拠し、「計[[量]]学」という用語を使用します。

測定の営みと計[[量]]学の3つの活動

測定とは

測定とは、ある量を、あらかじめ定められた「基準」と比較して、数値や符号で表すことです。例えば、長さを測る際には、定規や巻尺、より精密な測定にはマイクロメータなどを用います。測定に使用する器具やシステム全体を「測定系」と呼びます。

標準とは

測定系の示す値は、可能な限り一致している必要があります。そのため、「ある単位またはある量の値を定義、実現、保存、または再現することを意図した計器、実量器、標準物質、測定系」である「標準（standard）」が必要となります。標準によって実現されるべき値は国際的な合意によって定められており、国際標準から国家標準、参照標準、実用標準へと連鎖的に繋がっています。

計[[量]]学の3つの活動

計[[量]]学は、その活動を大きく3つに分類できます。

1. 計[[量]]単位の定義:
- 単位の基準を定めることです。例えば、1メートルはかつて「北極点と赤道の距離の1/10000000」と定義されていましたが、現在は「真空中で1秒の1/299792458の時間に光が進む行程の長さ」と定義されています。この定義は、より高い精度を追求するために見直されてきました。

2. 計[[量]]単位の現示:
- 定義された単位を、実際に物理的な量として具現化することです。メートルであれば、かつてはメートル原器が用いられましたが、現在はヨウ素で安定化されたヘリウムネオンレーザーが使用されています。

3. トレーサビリティの確立:
- 測定値の正確さを保証し、測定結果が国際標準にまで遡れるようにすることです。これにより、異なる場所や時間で行われた測定結果を比較し、信頼性を確保することができます。

計[[量]]学の分野

計[[量]]学は、以下の3つの分野に分けることができます。

科学計[[量]]（scientific metrology）:
- 測定標準の研究、開発、維持を担います。
産業計[[量]]（industrial metrology）:
- 産業界における測定器の適切な機能確保と較正を目的とします。生産、物流、医療、環境など、幅広い分野に関わります。
* 法定計[[量]]（legal metrology）:
- 商取引などで用いられる測定の正確性を担保し、関連法規を整備します。

特に産業計[[量]]は、現代社会の根幹を支える重要な分野であり、計測機器の開発から装置の整備、利用まで、工学的な課題も多く含まれるため、計測工学という分野を形成しています。

学術・技術と計[[量]]学

計[[量]]学は、科学的な議論を展開する上で不可欠な要素です。客観的かつ測定可能な事実に基づいて議論を進めるためには、高精度な測定ツールと、それらを支える計[[量]]学が欠かせません。

同時に、計[[量]]学の発展には、科学技術の進歩が不可欠です。メートルの定義が何度も見直され、より高精度なものへと進化してきた背景には、電磁気学、地球科学、金属加工技術など、様々な分野の科学技術の発展があります。

産業と計[[量]]学

産業革命以降、大量生産が実現したのは、均質な工業製品を正確かつ高速に計測できるようになったからです。計[[量]]学の発展は、産業的な付加価値の創出に直結しています。

各国の計[[量]]標準機関が、経済産業省や商務省といった通商分野に関わる省庁の管轄下にあることは、計[[量]]学が産業においていかに重要視されているかを物語っています。

法・行政と計[[量]]学

測定は、誰もが共通の基準を用いて行うことが求められます。そのため、政府が関与し、法規制を行うことで、測定の共通性を担保する必要があります。

計[[量]]器の検査や、製品の表示が正しいかを監視することは、政府の重要な役割です。日本では、計[[量]]法によって、計[[量]]の基準を定め、適正な計[[量]]の実施を確保しています。

研究機関

計[[量]]学に関する研究機関は、国際的な協力体制のもとで運営されています。主な機関として、国際[[度[[量衡]]総会]]（CGPM）、国際[[度[[量衡]]委員会]]（CIPM）、国際[[度[[量衡]]局]]（BIPM）、国際法定計[[量]]機関（OIML）などがあります。

また、各国は、国立またはそれに準ずる形で計[[量]]学に特化した研究機関（国家計[[量]]標準機関：NMI）を設置しています。

地域計[[量]]組織

各国のNMIは、地域別の地域計[[量]]組織（RMO）に所属し、連携・協力体制を構築しています。アジア太平洋計[[量]]計画 (APMP)や、欧州国家計[[量]]標準機関協会 (EURAMET)などが挙げられます。

まとめ

計[[量]]学は、私たちの生活のあらゆる場面で、その基盤を支える重要な学問分野です。測定の正確性を追求し、信頼性の高い測定結果を提供することで、科学技術の発展、産業の発展、そして社会全体の発展に貢献しています。

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