量

量：多様な分野における定義と概念

この記事では、数学、物理学、社会科学など様々な分野で用いられる「量」という概念について、詳細に解説します。単なる大きさだけでなく、その定義、分類、種類、演算、次元、さらには量ではない例まで、多角的に考察することで、より包括的な理解を目指します。

1. 量の定義

「量」の定義は、複数の視点から多様な解釈が存在します。

広辞苑: 物体の大きさと、その多寡を測定できる対象として定義されています。
JIS Z8000: 「数と計量参照との組合せで表せる大きさを持つ、現象、物体、物[[質]]の性質」と定義されています。これは、単なる大きさだけでなく、測定可能な属性であることを強調しています。
JIS Z8103: 「現象、物体、物[[質]]の属性で、定性的に区別でき、定量的に決定できるもの」と定義されています。定性的側面と定量的側面の両方を包含している点が重要です。
計量標準総合センター: 「測定可能な量」として、「大きさを持ち、数値と計量参照で表せる現象、物体、物[[質]]の属性」と定義されています。測定可能性を明確に示しています。

これらの定義を統合すると、「量」とは測定可能な、現象、物体、物[[質]]の属性であり、その大きさを数値で表現できるものと言えるでしょう。 「量」と対比される概念としては「質」があり、「定量的」と「定性的」という対比も存在します。

2. 量の種類と分類

量は様々な観点から分類できます。

2.1 離散量と連続量

測定可能な量は、数と単位の積で表されます。最小単位が存在する量が「離散量」（デジタル量）で、整数に対応します。一方、最小単位が存在しない量が「連続量」（アナログ量）で、実[[数]]に対応します。可算量という類似した用語もありますが、数学的な可算集合とは必ずしも一致しません。

2.2 統計学における尺度水準

統計学では、変数を名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比率尺度の4つの尺度水準に分類します。このうち、名義尺度は定性的値を表し、それ以外は定量的な値を表します。

2.3 物象の状態の量

計量法では、「取引または証明、産業、学術、日常生活で重要な機能を持つ」89の量を「物象の状態の量」として列挙しています。そのうち72量は法定計量単位が定められています。残りの17量は法定計量単位が未定です。

2.4 量体系、基本量、組立量

「量体系」とは、量を関係づける矛盾のない方程式の集合です。[国際量体系]が広く用いられています。「基本量」は、他の量では表現できない量で、慣習的に選択されます。「組立量」は、基本量によって定義される量です。

2.5 順序尺度量

順序尺度量は、大きさに基づく全順序関係を確立できる量ですが、代数的な関係を持たず、差や比に物理的な意味はありません。ロックウェル硬度、オクタン価などが例として挙げられます。

2.6 ポテンシャル量

ポテンシャル量は積分によって定義される量で、空間上の点と強く結びついています。絶対的な大きさに意味はなく、差に意味を持つ点が特徴です。標高、重力ポテンシャル、温度などが例です。

2.7 加法的な量

加法的な量（示量性）は、部分の量の和が全体の量となる性質を持つ量で、質量や体[[積]]などが該当します。加法的でない量（示強性）には、温度や圧力などがあります。

3. さまざまな分野における量

3.1 物理量

物理量は、物理現象や物[[質]]の測定可能な属性です。国際単位系における7つの基本量とその誘導量が含まれますが、定義の曖昧性からその範囲は文脈依存的です。スカラー量、ベクトル量、テンソル量、複素数量など、様々な種類が存在します。

3.2 工業量

工業量は、複数の物理的性質に関係する、工業的に有用な量です。硬さや表面粗さなど、測定方法によって定義されるものが含まれます。

3.3 感覚量と感性量

感覚量は、人間が主観的に感じる感覚の強さで、個人差や環境依存性があります。心理物理量は、感覚と1対1に対応する量で、視覚、聴覚、味覚、嗅覚に関連する量が挙げられます。感性量は、感覚量よりも内面的な、人の心が評価するような量です。

3.4 医学・生理学、医療

毒性、半[[数致死量]]、発癌性、線量などが含まれます。

3.5 社会科学

経済学では、生産量、通貨量、価格、所得などが扱われ、政治学では国民総生産や国民総幸福量などが重視されます。

3.6 試験

試験の点数やゲームの得点などが該当します。

4. 量の演算と次元

同じ種類の量同士では和と差の演算が可能で、異なる種類の量同士では積と商の演算が定義される場合があります。量の次元は、量の種類とそのべき乗に着目した概念で、次元解析に用いられ、等式の正しさのチェックや未知の等式の推定などに役立ちます。基本量と組立量を定義することで、次元解析が容易になります。社会科学の量にも次元解析が適用可能です。

5. 量ではない例

名義的性質は定量的に示すことができない特性で、性別、色、化学分野での斑点試験の色などが例として挙げられます。

まとめ

「量」は多様な分野で用いられる基本的な概念であり、その定義や分類は分野や文脈によって異なります。この記事では、様々な側面から「量」を解説することで、読者の理解を深めることを目指しました。

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