許信良

許信良（きょ しんりょう）

許信良（1941年5月27日 - ）は、台湾の政治家であり、民主進歩党（民進党）の元主席です。台湾の民主化運動において重要な役割を果たしましたが、後に民進党と対立し、汎藍連盟寄りの立場を取るようになりました。彼の政治キャリアは、台湾の現代史における複雑な変遷を反映しています。

生い立ちと初期のキャリア

許信良は、台湾桃園県で客家系地主の家庭に生まれました。幼少期から中国古典文学と歴史に親しみ、将来の総統を夢見ていました。国立新竹高級中学を卒業後、国立政治大学政治学科に進学し、入学半年後には中国国民党に入党しました。彼はその優秀な学業と国民党寄りの立場から、将来の行政管理を担う人材として期待されました。1964年に政治大学を卒業後、大学院に進学し、1967年には国民党の中山奨学金を得てイギリスのエディンバラ大学に留学し、哲学を専攻しました。

政治理念の変遷

イギリス留学は、許信良の政治理念に大きな影響を与えました。1960年代のヨーロッパでは、左派学生運動やベトナム反戦運動が活発であり、彼は毛沢東の影響も受け、一時的に中国共産党に共鳴したと述べています。1969年に帰国後、国民党改革派の刊行物『大学』に参加し、多くの論文を発表しました。その中で『台湾社会力分析』は、国民党幹部にも閲覧されました。1973年には、国民党候補として台湾省議会議員選挙に出馬し、当選しました。

しかし、この頃から国民党と許信良の間に確執が生じ始めました。彼は党の政策を拒否し、公然と批判を繰り返しました。1977年には、国民党を批判する著書『風雨之声』と『当仁不譲』を出版し、党内から批判を浴びました。同年10月には、党本部の警告を無視して桃園県長選挙に出馬し、国民党候補を破って当選しましたが、これにより党籍を剥奪されました。

党外活動と亡命生活

1979年、許信良は、叛乱罪で逮捕されていた余登発親子の釈放を求めるデモに参加し、県長職を罷免されました。その後、雑誌『美麗島』に参加し、社長に就任しました。同年12月には美麗島事件が発生し、多くの党外活動家が逮捕されましたが、当時アメリカに滞在していた許信良は逮捕を免れ、入国禁止処分を受けました。

アメリカでは、台湾独立建国連盟（台独聯盟）などの海外台湾人活動家と連携し、「台湾建国聯合陣線」を結成しました。1980年には、『美麗島週報』を創刊し、台湾での革命を主張しました。しかし、急進的な内容から台独聯盟と対立し、財政難に陥りました。1981年には、史明と協力して「台湾民族民主革命同盟」を結成しましたが、1983年に許信良が台湾革命党に入党するまで存続しました。1986年には、「台湾民主党建党委員会」を結成し、台湾への帰国を宣言しましたが、民進党が先に結党されたため、自身は「民進党海外支部」を自称しました。

帰国と民進党での活動

1989年、許信良は中国大陸を経由して台湾に密入国し、逮捕され、懲役10年の判決を受けましたが、1年後に特赦により出獄しました。1991年には、民進党主席に当選し、「台湾共和国建設」を党綱領に掲げました。しかし、県市長選挙での目標達成失敗を理由に、主席を辞任しました。1995年には、『新興民族』を出版し、民進党が中国大陸に進出すべきとする「大胆西進」を提唱しましたが、党内の独立派から反発を受けました。また、総統選挙の党内候補者指名で敗れ、立候補を果たすことができませんでした。

1996年、再び党主席に就任し、与野党協議を進め、省長職の廃止を実現しました。しかし、2000年の総統選挙では、陳水扁が民進党候補となったため、許信良は離党し、無所属で立候補しましたが、落選しました。

その後

陳水扁政権を批判し、国民党などの汎藍連盟寄りと評されるようになりました。中国大陸を訪問し、中国共産党幹部と接触するなど、両岸関係改善に尽力しました。2004年の総統選挙では、野党側の連戦と宋楚瑜を支援し、公民投票（国民投票）に反対する政策を立案しました。総統選挙後には、抗議運動に参加し、ハンガーストライキを行いました。また、立法委員選挙では「西進大陸，一統中国」をスローガンに掲げましたが、落選しました。

家族構成

妻：許鍾碧霞（第4期立法委員）
弟：許国泰（民主進歩党元立法委員）
姪：許応深（2000年に桃園県代理県長に就任）
姪：許応全（桃園県議員に立候補したことがある）

許信良の波乱に満ちた政治人生は、台湾の現代政治における複雑な対立と変遷を象徴するものと言えるでしょう。

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