訴訟費用
訴訟費用とは、裁判手続きを進める上で発生する費用のうち、法律によってその範囲が定められているものを指します。これは、裁判を受ける権利を保障しつつも、無制限な訴訟提起を防ぎ、手続きの公正性を保つために重要な役割を果たします。
日本の民事訴訟における訴訟費用の範囲は、「民事訴訟費用等に関する法律」によって詳細に定められています。費用負担については、原則として最終的に訴訟に敗れた当事者が負担することになります（民事訴訟法61条）。ただし、手続きの進行に必要な費用は、一時的に申立てを行った当事者が立て替えて支払うことになります。裁判が終結し、判決が確定した後、「訴訟費用額確定処分」という手続きを経て、本来負担すべき者が確定し、立て替えた費用が精算される仕組みです。
民事訴訟にかかる費用は、大きく分けて「裁判所に納める費用」と「証人などに対する給付」に区分されます。裁判所に納める費用はさらに、「手数料」と「手数料以外の費用」に分けられます。
手数料は、裁判手続きの申立てに対して発生する費用です。訴えを提起する際の手数料は、請求する金額（訴訟の目的の価額）に応じて計算されます。例えば、訴額10万円までは10万円ごとに1,000円、100万円を超え500万円までは20万円ごとに1,000円、といった段階的な計算がなされます。訴額が高くなるにつれて、増加率が緩やかになる仕組みですが、全体として訴額に対する手数料の割合は、訴額が低いほど高くなる「逆進性」が指摘されています。また、再審や和解の申立てなど、請求額に関わらず定額の手数料が定められている場合もあります。
この手数料は、通常、訴状などの申立書類に収入印紙を貼り付けて納付します。ただし、納めるべき手数料が100万円を超える場合は、現金での納付も可能です。手数料が正しく納付されない場合、その申立ては不適法と見なされ、裁判所は実体的な審理に進むことができません。
手数料以外の費用には、証拠調べのためにかかった実費や、書類を相手方に送達するための実費などが含まれます。また、裁判官や裁判所書記官が証拠調べなどのために出張した場合の旅費や宿泊料も、証人の例に準じて算定された金額に限り訴訟費用となります。ただし、裁判所事務官などの同行にかかる費用は、当事者負担とはならず国庫負担となります。
これらの手数料以外の費用についても、原則として当事者は事前に「予納」する必要があります。予納が行われない場合、裁判所はその手続き行為を行わないことができるとされています。予納は現金が原則ですが、送達に必要な費用については郵便切手で予納することも認められています。
裁判に出頭した証人、鑑定を行った鑑定人、通訳を行った通訳人に対して支払われる旅費、日当、宿泊料なども訴訟費用に含まれます。ただし、これらの者が正当な理由なく陳述などを拒んだ場合は、給付されないことがあります。
その他にも、第三債務者が差押えられた債権を供託する際に要した費用や、関連書類の作成・提出費用なども訴訟費用として認められる場合があります。
書類作成費用についても基準が定められており、訴状や準備書面、書証の写しなどの枚数に応じて加算される仕組みがあります。
日本の民事訴訟費用については、特に訴え提起手数料の高さが、裁判へのアクセスを妨げる要因の一つとして指摘されることがあります。1992年には1千万円を超える訴訟の手数料が値上げされました。大阪弁護士会や日本弁護士連合会は、司法制度改革の議論の中で、手数料の大幅な減額や低額化・定額化を求める提言を行ってきましたが、2004年の法改正でも値下げは実現せず、現在に至るまで抜本的な改正は行われていません。行政訴訟についても民事訴訟と同額の費用がかかるため、少額の取消しを求める場合などには費用負担が過大になるという批判もあります。
刑事訴訟における訴訟費用の範囲は、「刑事訴訟費用等に関する法律」によって定められています。主な費用としては、証人や鑑定人などの旅費、日当、鑑定料などに加え、国選弁護人の費用が含まれます。
刑事裁判で有罪判決（刑の免除を除く）が言い渡される場合、原則として被告人に対して訴訟費用の全部または一部を負担させなければなりません（刑事訴訟法181条）。しかし、被告人が貧困などの理由で費用を納付できないことが明らかな場合は、負担させないことも認められています。費用負担の命令は、判決の主文中で言い渡される必要があり、主文で言及されない場合は被告人の負担にはなりません。もし費用負担を命じられた被告人が、その後貧困のために完済が困難になった場合は、裁判確定後20日以内に執行免除の申立てを行うことができます。
刑事訴訟費用については、有罪判決を受けた被告人に支払い能力があるにも関わらず、費用が徴収されずに踏み倒されるケースが多数発生しており、問題となっています。実効性のある強制措置が不十分であることや、被告人の資力調査が徹底されていないことなどが、徴収率の低さにつながっていると指摘されています。
海外の刑事訴訟における費用負担の考え方は国によって異なります。例えばフランスでは、裁判無償の原則に基づき、訴訟費用は基本的に国庫が負担します。一方、ドイツでは被告人負担が原則ですが、被告人にとって有利な証人の出廷費用や外国人被告人の通訳費用など、費用負担の範囲から除外される項目が広く認められています。
これらのように、訴訟費用は裁判手続きの開始や進行に直接関わる重要な要素であり、その制度や負担のあり方は、裁判へのアクセスや公正性、さらには国の財政にも影響を与える側面を持っています。
民事訴訟における訴訟費用
日本の民事訴訟における訴訟費用の範囲は、「民事訴訟費用等に関する法律」によって詳細に定められています。費用負担については、原則として最終的に訴訟に敗れた当事者が負担することになります（民事訴訟法61条）。ただし、手続きの進行に必要な費用は、一時的に申立てを行った当事者が立て替えて支払うことになります。裁判が終結し、判決が確定した後、「訴訟費用額確定処分」という手続きを経て、本来負担すべき者が確定し、立て替えた費用が精算される仕組みです。
民事訴訟にかかる費用は、大きく分けて「裁判所に納める費用」と「証人などに対する給付」に区分されます。裁判所に納める費用はさらに、「手数料」と「手数料以外の費用」に分けられます。
手数料
手数料は、裁判手続きの申立てに対して発生する費用です。訴えを提起する際の手数料は、請求する金額（訴訟の目的の価額）に応じて計算されます。例えば、訴額10万円までは10万円ごとに1,000円、100万円を超え500万円までは20万円ごとに1,000円、といった段階的な計算がなされます。訴額が高くなるにつれて、増加率が緩やかになる仕組みですが、全体として訴額に対する手数料の割合は、訴額が低いほど高くなる「逆進性」が指摘されています。また、再審や和解の申立てなど、請求額に関わらず定額の手数料が定められている場合もあります。
この手数料は、通常、訴状などの申立書類に収入印紙を貼り付けて納付します。ただし、納めるべき手数料が100万円を超える場合は、現金での納付も可能です。手数料が正しく納付されない場合、その申立ては不適法と見なされ、裁判所は実体的な審理に進むことができません。
手数料以外の費用
手数料以外の費用には、証拠調べのためにかかった実費や、書類を相手方に送達するための実費などが含まれます。また、裁判官や裁判所書記官が証拠調べなどのために出張した場合の旅費や宿泊料も、証人の例に準じて算定された金額に限り訴訟費用となります。ただし、裁判所事務官などの同行にかかる費用は、当事者負担とはならず国庫負担となります。
これらの手数料以外の費用についても、原則として当事者は事前に「予納」する必要があります。予納が行われない場合、裁判所はその手続き行為を行わないことができるとされています。予納は現金が原則ですが、送達に必要な費用については郵便切手で予納することも認められています。
証人等に対する給付
裁判に出頭した証人、鑑定を行った鑑定人、通訳を行った通訳人に対して支払われる旅費、日当、宿泊料なども訴訟費用に含まれます。ただし、これらの者が正当な理由なく陳述などを拒んだ場合は、給付されないことがあります。
その他にも、第三債務者が差押えられた債権を供託する際に要した費用や、関連書類の作成・提出費用なども訴訟費用として認められる場合があります。
書類作成費用についても基準が定められており、訴状や準備書面、書証の写しなどの枚数に応じて加算される仕組みがあります。
日本の訴訟費用の課題と変遷
日本の民事訴訟費用については、特に訴え提起手数料の高さが、裁判へのアクセスを妨げる要因の一つとして指摘されることがあります。1992年には1千万円を超える訴訟の手数料が値上げされました。大阪弁護士会や日本弁護士連合会は、司法制度改革の議論の中で、手数料の大幅な減額や低額化・定額化を求める提言を行ってきましたが、2004年の法改正でも値下げは実現せず、現在に至るまで抜本的な改正は行われていません。行政訴訟についても民事訴訟と同額の費用がかかるため、少額の取消しを求める場合などには費用負担が過大になるという批判もあります。
刑事訴訟における訴訟費用
刑事訴訟における訴訟費用の範囲は、「刑事訴訟費用等に関する法律」によって定められています。主な費用としては、証人や鑑定人などの旅費、日当、鑑定料などに加え、国選弁護人の費用が含まれます。
刑事裁判で有罪判決（刑の免除を除く）が言い渡される場合、原則として被告人に対して訴訟費用の全部または一部を負担させなければなりません（刑事訴訟法181条）。しかし、被告人が貧困などの理由で費用を納付できないことが明らかな場合は、負担させないことも認められています。費用負担の命令は、判決の主文中で言い渡される必要があり、主文で言及されない場合は被告人の負担にはなりません。もし費用負担を命じられた被告人が、その後貧困のために完済が困難になった場合は、裁判確定後20日以内に執行免除の申立てを行うことができます。
刑事訴訟費用の徴収の問題点
刑事訴訟費用については、有罪判決を受けた被告人に支払い能力があるにも関わらず、費用が徴収されずに踏み倒されるケースが多数発生しており、問題となっています。実効性のある強制措置が不十分であることや、被告人の資力調査が徹底されていないことなどが、徴収率の低さにつながっていると指摘されています。
海外の刑事訴訟における訴訟費用
海外の刑事訴訟における費用負担の考え方は国によって異なります。例えばフランスでは、裁判無償の原則に基づき、訴訟費用は基本的に国庫が負担します。一方、ドイツでは被告人負担が原則ですが、被告人にとって有利な証人の出廷費用や外国人被告人の通訳費用など、費用負担の範囲から除外される項目が広く認められています。
これらのように、訴訟費用は裁判手続きの開始や進行に直接関わる重要な要素であり、その制度や負担のあり方は、裁判へのアクセスや公正性、さらには国の財政にも影響を与える側面を持っています。
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