証人の椅子

映画『証人の椅子』解説

『証人の椅子』は、1965年に公開された山本薩夫監督による日本映画です。原作は開高健の小説『片隅の迷路』。地方都市で起きた殺人事件を巡り、冤罪の可能性を追求する人々の姿を描いた社会派ドラマです。事件の真相と、裁判制度の問題点を鋭く抉る作品として、公開当時から高い評価を得ています。

あらすじ

物語は、徳島市のラジオ店主が殺害された事件から始まります。事件発生から9ヶ月後、被害者の内縁の妻である洋子が犯人として逮捕され、懲役13年の判決が下されます。洋子は控訴しますが、二審でも有罪判決は覆らず、絶望した彼女は最高裁への上告を取り下げようとします。そんな中、4年前のラジオ商殺しの真犯人だと名乗る男が現れますが、自白があいまいであるとして釈放されてしまいます。

洋子の義理の甥である瀬戸物商の流二は、この事件の真相を解き明かすため、裁判のやり直しを求めることを決意します。彼は、洋子を有罪に導いた重要な証拠となった二人の少年の証言に不審を抱き、徹底的に調査を進めます。その結果、少年たちが検察官の誘導によって嘘の証言をしていたことを確信します。長期間の拘留と脅迫的な詰問という状況下で、恐怖と自由への渇望から偽証したというのです。

流二たちの動きを察知した検察は、少年たちへの圧力を強める一方で、流二に対しては威嚇や買収などの手段で捜査を開始します。検察と流二の板挟みになった少年たちは心身ともに疲弊し、流二自身も精魂尽き果てそうになります。しかし、人権擁護官の進言に端を発した検察審査会の勧告によって、二人の少年の証言に偽証の疑いがあることが明らかになります。流二と少年たちは孤立した状況から救われましたが、裁判のやり直しへの道はまだ険しいものでした。

スタッフ

監督：山本薩夫
脚色：井手雅人
原作：開高健『片隅の迷路』
製作：伊藤武郎、宮古とく子
撮影：上村竜一
美術：菊池誠
音楽：池野成
録音：空閑昌敏
照明：高橋一三
編集：河野秋和

キャスト

浜田流二：福田豊土
浜田たか子：吉行和子
山口検事：新田昌玄
葛西洋子：奈良岡朋子
坂根進：樋浦勉
柳原正夫：寺田誠
今井弁護士：浜田寅彦
久子：日岸喜美子
竜子：日色ともえ
榊部長：松下達夫
安井副部長：下絛正巳
高瀬検事：大滝秀治
服部事務官：庄司永建
佐藤弁護士：永田靖
岡本人権擁護課長：加藤嘉
徳島市警察主任警部：佐野浅夫
地裁裁判長：清水将夫
坂根の父：大町文夫
警察医：嵯峨善兵
その他、石黒達也、宮坂将嘉、島田敬一、牧野義介、大友純、山村弘三、野村昭子、磯野みどり、高山秀雄、内藤安彦、鈴木智、小野田巧、田口精一、井上かおる、里井正美、今野鶏三、星野和正、村田章、山吉克昌、多治見享、石島房太郎、加地健太郎、福山練、石森武雄、永田裕康など、多くの俳優が出演しています。

受賞歴

1965年度 第16回ブルーリボン賞 監督賞：山本薩夫（『にっぽん泥棒物語』と合わせて受賞）
1965年 第20回毎日映画コンクール 俳優部門女優助演賞：奈良岡朋子
1965年度 第39回キネマ旬報賞 日本映画ベスト・テン5位

作品のポイント

『証人の椅子』は、単なるミステリーとしてだけでなく、当時の日本の司法制度の問題点を鋭く批判した社会派ドラマとして評価されています。警察や検察による強引な捜査、証拠の捏造、そして権力による圧力など、社会の暗部をリアルに描き出しています。また、冤罪という重いテーマを通して、正義とは何か、真実とは何かを観客に問いかける作品です。

参考文献

allcinema: https://www.allcinema.net/cinema/11582
KINENOTE: https://www.kinenote.com/main/m_info.aspx?id=19492
[国立映画アーカイブ]]: [https://www.nfaj.go.jp/archive/result/details.html?id=000000038169

外部リンク

allcinema: https://www.allcinema.net/cinema/11582
[日本映画データベース]]: [https://jfdb.jp/title/1809
KINENOTE: https://www.kinenote.com/main/m_info.aspx?id=19492
[IMDb]]: [https://www.imdb.com/title/tt0185620/
[国立映画アーカイブ]]: [https://www.nfaj.go.jp/archive/result/details.html?id=000000038169
[文化庁]]日本映画情報システム: [https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/kokuho/kokuho_2.html（※ウェイバックマシンによるアーカイブ）
* 角川映画: https://web.archive.org/web/20220207070721/https://movies.kadokawa.co.jp/shouninnisu/(※ウェイバックマシンによるアーカイブ)

もう一度検索