試製対空戦車 タセ

試製対空戦車 タセ

試製対空戦車タセ（しせいたいくうせんしゃ タセ）は、1941年に日本陸軍によって開発された対空戦車であるが、公式に制式化されることはなかった。この戦車の開発の背景には、1930年代に増大した航空機の脅威に対抗するため、高威力の対空火器の必要性があった。

開発の経緯

日本では1934年から新型の対空機関砲の研究が進められ、1939年には九八式二十粍高射機関砲、通称ホキ砲が制式化された。しかし、ホキ砲の運用には固定陣地の設営が不可欠であり、機動力が不足していた。この問題を解決するために、九四式六輪自動貨車にホキ砲を搭載する試みがなされた。さらに、半装軌車から全装軌車に改良されたキト車が開発されたが、最終的には不採用となった。

1941年には、これらの経験を踏まえて、軽戦車を基にした対空戦車の開発が始まり、これがタセとなる。タセの運用は戦車部隊に随伴し、航空攻撃から自軍部隊を守ることが主な目的だった。

構造と設計

タセは九八式軽戦車を基にしており、車体の形状には改良が施されている。特に、車体側面は素材の溶接によって構築され、戦闘室の内部空間が増加したことが特徴である。ターゲットとなる航空機に迅速に応対するため、車体から従来の砲塔を取り外し、オープントップの砲塔を新たに搭載した。これにより、砲手は全周の防御を得ることができる。

タセに搭載された機関砲は、試製ホキ砲II型と呼ばれるもので、九八式二十粍高射機関砲を基にした。この砲は約2000mmの長さを有し、照準装置は改良がなされ、リード角がつけられた二点照準方式であった。射程は600mから1400mとなっており、発射速度は毎分300発である。

試験と評価

射撃試験の結果、タセは設置された砲による射撃と比較して命中精度に課題を残すことが明らかになった。1943年の試験では不採用が決定され、主な理由は照準精度の問題、発射速度の向上が乏しい点、製造及び実用性において牽引式の機関砲の方が実利が高いとされた。

登場作品

タセはゲームなどの作品にも登場しており、例えば『R.U.S.E.』では日本の対空戦車として、『War Thunder』では日本陸軍の対空車両として、また『Enlisted』では太平洋キャンペーンにおける日本陸軍の試製対空戦車として表現されている。

結論

試製対空戦車タセは、日本陸軍が試作した対空戦車の一つでありながら、実際の戦闘における運用には至らなかった。にもかかわらず、その開発は航空戦における戦術の変化や、戦車の役割に関する重要な教訓を提供した。特に、航空機への対抗手段の多様性を重要視する契機となった点において、その意義は大きいとされる。

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