誉 (エンジン)

誉（ほまれ） - 中島飛行機の航空機用エンジン

誉（ほまれ）は、1940年代に中島飛行機と日本海軍航空技術廠が共同で開発した空冷式エンジンです。このエンジンは、第二次世界大戦の後半において日本の各種航空機に広く搭載され、戦闘機や爆撃機、偵察機などで活躍しました。

開発背景

誉の開発は、1930年代後半から始まりました。中島飛行機は、当時出力900〜1,800馬力の空冷二重星型エンジンを開発していて、さらに高出力を目指すために新たなエンジンの設計を進めました。1940年には海軍への構想提出を行い、1942年に正式に生産が開始されました。これは、当時としては異例の速さであり、短期間での開発成功を志しました。

設計と性能

誉は、主に以下の特性を持ったエンジンです。

• - 型式: 空冷星型複列18気筒（9気筒×2列）
• - 排気量: 35.8L
• - 離昇出力: 初期モデルで1800PS、後に2000PSを超える出力を発揮。

特に特徴的なのは、2,000馬力級の出力を維持しながら、サイズと重量が比較的小さくなっている点です。しかし、高い生産技術が求められるため、戦局の悪化とともに生産の難易度が増しました。

生産と採用機体

誉の生産は1942年から始まり、多くの機体に搭載されました。代表的な搭載機には、戦闘機系統では「疾風」や「紫電改」、爆撃機系統では「銀河」や「流星」などがあります。生産数は1944年に5400基に達し、航空機の性能向上に大いに寄与しました。

経験した問題

ただし、誉にはいくつか問題も存在しました。燃料の質が悪化し、低オクタン価ガソリンの使用を余儀なくされたため、エンジンの性能が不安定になる事態が続きました。この影響でエンジン不調や故障が多発し、整備状態も悪化しました。特に、軍の整備体制の甘さも問題を助長しました。

技術的特徴

誉の設計理念には、当時の欧米の主流に近い形でのエンジン出力の最大化が図られていました。特に、冷却フィンの構造やクランクシャフトの設計が重視され、クランクケースに新たな素材を使用したことで軽量化が実現されました。

また、誉は独自の水メタノール噴射装置を搭載し、これにより低オクタンガソリンの使用時でもエンジンのノッキングを抑制する設計がされています。これが一定の効果をもたらしたものの、調整や整備が難しかったため、完全な運用には至りませんでした。

結末

最終的に、誉は技術的な挑戦を背景に、「日本の航空技術が生んだ奇跡のエンジン」とも評され、戦後のアメリカ軍による評価でも注目されました。しかし、一方では生産効率や信頼性に欠ける部分も指摘され、戦局の厳しさの中で不具合の多いエンジンという評価も受ける結果となりました。

このように、誉エンジンはその高性能と同時に多くの課題を抱えていたことが、その後の航空機エンジン開発に多大な影響を与えることになりました。

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