諏訪忠虎

諏訪忠虎：信濃高島藩を支えた知略と文雅の藩主

諏訪忠虎は、信濃国高島藩の第4代藩主として知られる人物です。家系を辿れば、第3代藩主・諏訪忠晴の三男にあたります。江戸藩邸で誕生した忠虎は、幼少期から学問に励み、その才能は将軍・徳川綱吉の目に留まるほどでした。延宝6年（1678年）には、わずか20歳にして従五位下安芸守に叙任されています。

将軍への近侍は、忠虎の地位と影響力を高めることになりました。しかし、その生涯は順風満帆ではありませんでした。元禄8年（1695年）、父・忠晴の死によって家督を相続した忠虎は、藩主としての重責を担うことになります。しかし、赴任早々に、江戸藩邸の焼失という不幸に見舞われます。さらに、元禄大地震という未曾有の大災害が藩を襲い、藩財政は急速に悪化していきました。

困難な状況の中、忠虎は江戸火消役や山里丸門番といった職務にも従事しました。こうした職務は、藩の安定維持に貢献するだけでなく、幕府との良好な関係を保つ上でも重要な役割を果たしたと考えられます。しかしながら、財政難は藩政運営の大きな足かせとなり、忠虎は常にその解決に頭を悩ませることとなったでしょう。

元禄16年（1703年）2月11日、忠虎は流罪となった吉良義周の身柄を預かるという重要な任務を負います。高島城南丸の屋敷を改装して預かり屋敷としたことから、義周への扱いは、一般の罪人とは異なる特別なものだったことが窺えます。忠虎の娘・於栄の舅が吉良と親しかったこと、そして義周が幕府要人と親交があったことも、この優遇された扱いに影響を与えた可能性があります。

忠虎は、文雅な側面も持ち合わせていました。父譲りの教養を活かし、俳諧をたしなみ、服部嵐雪や宝井其角といった当時の著名な俳諧師に師事しました。宝井其角の記録によると、忠虎の俳諧の腕前は相当なものであったと推測されます。藩内においても俳諧が流行し、藩士たちと俳諧の会を開くなど、文化振興にも貢献しました。

享保16年（1731年）、69歳でこの世を去った忠虎。嫡男である三男・忠尋が早世していたため、養嗣子の忠林が家督を相続することになります。忠虎の死後、高島藩は忠林によって維持されていきましたが、忠虎の時代から続く財政難は、藩の将来に大きな影を落とすこととなったでしょう。

忠虎の生涯は、困難な時代を生き抜いた藩主の物語です。学問と文雅な教養、そして政治手腕を兼ね備えた忠虎は、藩の発展に尽力しましたが、様々な困難に直面し、その重圧の中で生涯を終えたといえるでしょう。彼の功績と苦悩は、高島藩の歴史に深く刻まれています。

系譜

父: 諏訪忠晴
母: 磐城平藩内藤忠興の養女
正室: 越前国松岡藩主松平昌勝の娘
側室: 妙華院

子女

右京（長男）
盛太郎（次男）
諏訪忠尋（三男）
勝之丞（四男）
助藏（五男）
八十之丞（六男）
諏訪忠休（七男）
於栄（伊予国吉田藩主伊達村信正室）
娘（信濃国飯山藩主本多助有正室）
雲台院（諏訪忠林正室）

婿養子

* 諏訪忠林（分家旗本、江戸北町奉行などを勤めた諏訪頼篤の次男）

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