諏訪忠晴

諏訪忠晴：信濃高島藩の改革者と晩年の影

諏訪忠晴は、信濃高島藩の第3代藩主として、17世紀後半の激動期に藩を治めた人物です。父である第2代藩主・諏訪忠恒の跡を継ぎ、3万石の藩を統治しました。側室の子として諏訪で生まれた彼は、幼少期から藩主としての重責を担う運命にあったと言えるでしょう。

家督相続と藩政改革

明暦3年(1657年)、忠晴は家督を相続します。父の遺命に従い、弟2人にそれぞれ1000石を分知し、旗本として独立させました。これにより、諏訪藩は3万2000石から3万石へと規模を縮小しましたが、藩内における勢力バランスの調整と弟たちの将来への配慮という、政治的配慮がうかがえます。同年に従五位下因幡守に叙任され、万治元年(1658年)には磐城平藩主内藤忠興の養女を正室に迎えました。

寛文5年(1665年)には、藩の支配機構の強化に着手しました。宗門改めや藩士知行の改定、蔵方知行の実施など、藩政改革を断行したのです。これは、藩の財政基盤を強化し、統治体制を安定させるための重要な施策でした。これらの改革は、後の延宝の飢饉における藩の対応にも繋がったと考えられます。

文化人としての顔と領内紛争

忠晴は政治家としての活動だけでなく、文化人としても知られています。延宝4年(1676年)には『本朝武林小伝』7巻とその続編35巻を編纂するなど、歴史や文化への造詣も深く、狩野派の絵画も嗜んでいたと伝えられています。

しかし、彼の治世は平穏なものではありませんでした。延宝6年(1678年)には、金沢山の入会権を巡る金沢村と千野村の争いが再燃し、藩をも巻き込む大事件に発展しました。この事件では、金沢宿の問屋小松三郎左衛門が藩の裁許状を覆そうとしたとして処刑され、「小松三郎左衛門磔殺事件」として知られています。藩の対応は厳格でしたが、小松に突きつけられた罪状は「山論に没頭するあまり、本来の問屋業務を疎かにした」というものであり、藩の秩序維持という観点からは妥当な判断だったと言えるでしょう。この事件は、忠晴の治世における厳しい一面を示す出来事でした。

晩年と家老の専横

天和元年(1682年)には高田城在番と高田領内の検地を行い、天和3年(1683年)には検地の総奉行を務めた家老の諏訪頼意が幕府から恩賞を受けています。これは、忠晴の治世における家老の活躍を示す一方で、後に問題となる家老の専横の伏線とも捉えることができます。忠晴晩年には、家老が藩政を牛耳るようになり、後に「二の丸騒動」と呼ばれる事件へと発展していきます。元禄4年(1691年)には大坂加番を命じられ、家老の頼意らを伴ってその任務を遂行しました。元禄8年(1695年)、57歳で死去し、諏訪藩主菩提寺の温泉寺に葬られました。跡は三男の忠虎が継ぎました。

まとめ

諏訪忠晴は、藩政改革や領内紛争の解決に尽力し、文化活動にも造詣の深い藩主でした。彼の治世は、諏訪藩の安定と発展に貢献しましたが、晩年における家老の専横は、後の藩の混乱へと繋がっていくことになるのです。彼の生涯は、17世紀の藩主の役割と困難を浮き彫りにするものです。

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