諏訪直性

諏訪直性：鎌倉幕府滅亡に殉じた武士の生涯

諏訪直性は、鎌倉時代後期に活躍した武士です。北条氏得宗家の被官として仕え、その生涯は鎌倉幕府の興亡と深く関わっています。本稿では、直性の生涯、系譜、そして同一人物と推測される諏訪宗経との関係性について、複数の史料を基に詳細に考察します。

政治的地位と活動

『太平記』によると、直性は正慶2年/元弘3年（1333年）の鎌倉幕府滅亡（東勝寺合戦）において自害しました。また、『公衡公記』（西園寺公衡の日記）には、正和4年（1315年）3月8日の鎌倉大火で被害を受けた要人の一人として名前が確認できます。これらの記録から、直性が幕府内で重要な地位を占めていたことが分かります。

得宗宛披露状の宛名人であったことや、得宗家公文所奉書において長崎氏に次ぐ奉者第二位を務めていたことから、幕府内での高い影響力と信頼性を窺い知ることができます。さらに、法名に「性」の字を持つ点が、諏訪盛経（法名：真性）と共通しており、直性は盛経の直系子孫あるいはそれに近い後継者であった可能性が高いと考えられています。

直性は幕府内で様々な役職を歴任しました。正安元年（1299年）には侍所の職員、翌年には越訴奉行に任じられ、公文所奉行人や鶴岡八幡宮別当なども歴任し、幕府の主要な政治に関与しました。元亨3年（1323年）には、9代執権北条貞時の十三回忌法要に際し、多額の寄進を行っています。これらの事実は、直性が幕府における重要な地位を占め、政治的な影響力を持っていたことを示しています。

系譜と氏名に関する考察

諏訪直性の系譜と氏名については、歴史家の細川重男氏による詳細な考証があります。複数の系図には、諏訪盛経の子として諏訪宗経の名前が記載されており、特に『尊卑分脉』にも記載されていることから、宗経の実在はほぼ確実視されています。

細川氏は、宗経の名乗りが北条時宗と盛経からそれぞれ一字ずつ取られている点に着目し、宗経が盛経の嫡子、つまり後継者であったと推測しています。そして、盛経の後継者とされる直性と宗経が同一人物である可能性が高いと結論づけています。

この推測を裏付ける証拠として、直性の妻が北条貞時の娘の乳母を務めていたという事実があります。これにより、宗経は貞時とほぼ同世代であると推測され、『太平記』における直性と摂津親鑑の年齢に関する記述とも整合性があります。

細川氏は当初、直性の実名を諏訪宗秀と推定していましたが、後年の研究で修正しています。しかし、『武家年代記裏書』や『尊卑分脉』、『系図纂要』、『寛政重修諸家譜』など複数の史料に「宗経」の名が見られることから、宗経と直性の間に名乗りが変化した可能性も考慮する必要があるでしょう。

直性（宗経）の息子については、複数の系図に異なる人物が記載されています。この点も、今後の更なる研究によって解明していく必要があるでしょう。

結論

諏訪直性は、北条氏得宗家に仕えた実力のある武士であり、幕府の要職を歴任しました。時宗との烏帽子親子関係や、貞時の娘の乳母夫という縁故から、幕府内での影響力も強かったと考えられます。彼の生涯は、鎌倉幕府の盛衰と不可分であり、その最期は幕府滅亡と共にあると言えるでしょう。今後の研究により、直性（宗経）に関する更なる詳細が明らかになることが期待されます。

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