諸手船

諸手船（もろたぶね）

諸手船は、島根県松江市美保関町にある美保神社の神事で必要とされる特別な刳舟です。1955年2月3日には重要有形民俗文化財に認定され、地域の文化を象徴する存在となっています。この舟は、毎年12月3日に美保関漁港で行われる神事の際のみ海に浮かびます。それ以外の時期は、美保神社の境内に保管されています。

概要

この舟は、約40年ごとに新しく造り替えられることが伝統とされています。現在確認されている諸手船は、1978年に大根島入江の船大工・吉岡睦夫によって作られた2艘です。また、現存する舟の他にも、古くは1940年に制作された先代の舟も美保神社に収蔵されています。この先代の舟は、吉岡利一郎が担当し、まさにこの地域の職人技術が受け継がれた証といえます。それ以前の舟については、既に失われてしまいましたが、1901年に地元の船大工によって作られた舟や、1858年に隠岐の島から寄付されたものが存在していました。これらを通じて、この神社における舟の伝統が、40年に一度の更新と共に続いていることがわかります。

この舟の構造は、古典的な丸木舟を基にしており、元々はクスノキの巨木から刳りぬかれたものでしたが、現行の舟はモミの大木を使用し、刳りぬき部材を用いて構造を強化しています。現舟は、古い設計や製法を尊重しつつ、より太い木材を採用することで、技術の進化が垣間見えます。

諸手船神事

毎年12月3日に開催される神事は、地域の伝説である国譲り神話に基づいており、美保神社の祭神・事代主命が、美保関の沖で釣りをしている際に国を譲るかどうかを尋ねる使者が諸手船に乗ってやって来たエピソードを再現することを目的としています。この神事は、地域における五穀豊穣、大漁、港の繁栄に対する感謝の意も込められています。

この伝統行事の中では、ホーライエッチャと呼ばれる行列の中で、特別な装束を身にまとった氏子が二艘の諸手船に9人ずつ乗り込みます。彼らは対岸の客人社（まろうどやしろ）まで向かい返し、この間に互いの舟に櫂を使って海水をかけ合い、競漕を楽しみます。最終的に、船の舳先に挿した「マッカ」と呼ばれる飾りを神社に奉納します。

関連項目

• - トモド：島根県で認定された重要有形民俗文化財の刳舟。
• - そりこ：同じく島根県の重要有形民俗文化財に指定された刳舟。

諸手船の存在は地域の文化的遺産として捉えられており、今後もその伝統は育まれていくことでしょう。

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