謝玄

謝玄（しゃ げん）：淝水の戦いを勝利に導いた東晋の名将

謝玄（343年 - 388年）は、東晋時代に活躍した傑出した軍人です。字は幼度、小字は羯。陳郡陽夏県の出身で、叔父に宰相の謝安を持つ名門の出であり、その軍事的才能によって東晋を守り抜きました。中国を代表する名将として、武廟六十四将にも選ばれています。

若き日の才能

幼い頃から聡明で、叔父の謝安から将来を嘱望されていました。国家を経営する才略を持ちながらも、若い頃は官位を求めず、桓温に才能を認められ重用されました。桓温は謝玄を高く評価し、将来の活躍を予見していたと言われています。

北府軍の創設

377年、前秦の勢力拡大に対抗するため、謝安の推薦により、謝玄は北府軍を率いることになります。劉牢之ら優れた人材を登用し、北府軍を精強な軍隊に育て上げました。北府軍は、その勇猛さで敵を圧倒し、東晋の北方防衛の要となりました。

淝水の戦い

383年、前秦の苻堅が80万とも言われる大軍を率いて東晋に侵攻。謝玄は、わずか8万の兵でこれを迎え撃ちました。淝水の戦いでは、巧みな戦略と兵の士気を高めることで、前秦軍を打ち破り、東晋を救いました。この戦いは、中国史上でも有名な戦いの一つとして知られています。

淝水の戦いの詳細

苻堅は東晋攻略のため、総勢87万の大軍を率いて南下を開始しました。これに対し、謝玄は都督徐兗青三州揚州之晋陵幽州之燕国諸軍事・前鋒都督に任じられ、謝石、謝琰、桓伊らと共に8万の兵を率いて迎撃します。

前哨戦である洛澗の戦いでは、劉牢之が夜襲を敢行し、前秦軍を大破。この勝利により、東晋軍は勢いづき、謝玄は苻堅に対し、淝水を挟んでの対峙の際に「軍を少し引いて、晋軍が渡河できるよう場所を空けるように」と挑発します。苻堅はこの挑発に乗って軍を後退させますが、東晋軍に内通していた朱序が「秦兵は敗れた！」と叫び、前秦軍は大混乱に陥ります。その隙に東晋軍は渡河し、苻融を討ち取るなどして大勝。前秦軍は総崩れとなり、苻堅自身も敗走しました。

その後の活躍と死

淝水の戦いの後、謝玄は北方の平定に尽力し、領土を拡大しました。しかし、その功績を妬む者もおり、次第に朝廷内での立場を失っていきます。388年、病のため46歳で亡くなりました。その死は、東晋にとって大きな損失でした。

人物

謝玄は、優れた軍事的能力に加え、人を見る目にも長けていました。劉牢之のような有能な人材を積極的に登用し、その能力を最大限に引き出しました。また、部下からの信頼も厚く、常に冷静沈着で、困難な状況でも的確な判断を下すことができました。

逸話

釣り好き：謝玄は釣り好きで、釣った魚を漬物にして友人に振る舞っていた。
姉・謝道蘊との関係：姉の謝道蘊は才女として知られ、謝玄を厳しく指導した。
* 謝安との囲碁：淝水の戦いを前に、謝安と囲碁を打ち、平静を装った。

評価

謝玄は、東晋を代表する名将として、その名声は後世にまで語り継がれています。淝水の戦いでの勝利は、東晋の国力を高め、文化の発展にも貢献しました。彼の軍事的才能とリーダーシップは、中国史上においても特筆すべきものであり、多くの人々に敬愛されています。

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