谷口弥三郎

谷口弥三郎について

谷口弥三郎（たにぐち やさぶろう）は、1883年に香川県で生まれ、高名な政治家でありながら産婦人科医師、また医学者としても知られる人物です。彼は1963年に亡くなるまで日本の医療と政治に多大な影響を与えました。

学歴と初期のキャリア

谷口は、1902年に私立熊本医学校（現在の熊本大学医学部）を卒業し、さらに熊本病院の産婦人科での勤務を経て、日露戦争には陸軍の三等軍医として従軍しました。戦争後、熊本病院に戻り、1909年には母校の熊本医学専門学校で助教授に就任。後にドイツへ留学し、1915年に教授となり、医学博士の資格も取得しました。

日本医師会長と医学への貢献

1931年から熊本市医師会長、翌年には熊本県医師会長として地域の医療の発展に尽力しました。また、1939年には婦人を中心とした人口増強調査を実施し、効果的な人口政策への道を切り開きました。その一環として、彼は「不良な子孫の出生を防止する」という考えに基づき、優生的な施策にも賛同し、影響を及ぼしました。

優生保護法の成立

第二次世界大戦後、谷口は優生学に基づく立場へと転換し、優生保護法（現母体保護法）の提案者として国会に登場します。1947年に日本進歩党から参議院議員として当選した後、精神病患者や障害者の増加を懸念し、社会の「逆淘汰」を防ぐために、先天性の遺伝病者の出生を抑制すべきだと主張しました。

谷口の理論は、1939年の論文にも見られ、彼は「避妊法は低所得者層には行われず、中流以上の人々に濫用される」として、経済的理由による出産管理の重要性を訴えました。この考えは優生保護法の提案につながります。法律の中には、ハンセン病を誤って遺伝病と位置づけ、患者の強制断種を可能にする内容が含まれていました。哲学者の森岡正博は、谷口には明確な優生思想が存在すると指摘しています。

法律の改訂と日本医師会活動

優生保護法の施行後、谷口は優生保護法指定医師の団体「日本母性保護医協会」を設立。また、1950年には参議院決算委員会の委員、さらに多くの選挙でも当選し続け、1953年には久留米大学の学長に就任しました。彼はこの期間、日本医師会会長としても活動し、医療界における権威を確立しました。

最期と功績

谷口弥三郎は、1963年に80歳でその生涯を終えました。死去の日には勲二等瑞宝章が追贈され、正八位から従四位に叙されました。彼の業績をしのぶため、久留米大学には谷口の銅像が設置されています。

彼の影響力と貢献は、現在でも医療政策や社会における医学の位置づけに影響を与え続けています。

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