豆炭

豆炭とは

豆炭は、石炭、低温コークス、亜炭、無煙炭、木炭などの粉末を混ぜ、結着剤で豆状に成形した固形燃料です。日本で開発され、家庭用燃料として広く利用されてきました。

概要

豆炭は、1920年に川澄政（ミスジ初代社長）によって、欧州の成形石炭を改良し開発されました。家庭で扱いやすいように工夫され、中央に厚みのある正方形の豆状をしています。大きさは一辺が5cm程度で、硬く重いのが特徴です。

製造には、十数種類の石炭をブレンドするのが一般的ですが、木炭やコーライト（石炭の低温乾留で得られる半成コークス）が使われることもあります。これらの粉末に、消石灰、ピッチ（コールタール、原油、木タールなどの蒸留時に残る固体炭素質の残留物）、ベントナイトなどを混ぜて豆状に成型し、乾燥炉で焼成します。製造ラインは、圧縮成型部分を除いて、練炭と共通する部分が多いです。

豆炭は、豆炭炬燵の燃料として広く使われています。電気を使わずに長時間安定した暖房が得られるため、松江城を巡る遊覧船などでも利用されています。

また、蒸気機関車（大井川鉄道）など、石炭を燃料とするボイラーでも工業用の豆炭が使われることがあります。工業用豆炭は、燃焼効率を上げるために作られており、家庭用のものとは形状が異なります。

近年では、欧米で普及しているCharcoal briquetteが「豆炭」という名称で販売されることもあります。これらは木炭粉を主原料としており、日本の伝統的な豆炭とは異なります。

歴史

豆炭は、1920年に川澄政によって開発されました。かつては、火鉢や七輪、コンロなどで木炭のように使われ、生活必需品として重宝されました。現在では、豆炭炬燵や豆炭あんかの燃料としての需要がほとんどです。また、近年ではダッチオーブンの加熱用燃料としても利用されています。

主な出来事

1920年（大正9年）：川澄政が豆炭を発明
1921年（大正10年）：川澄煉炭株式会社（現・株式会社ミスジ）が設立、販売開始
1922年（大正11年）：株式会社十全商会が設立、販売開始
1934年（昭和9年）：品川豆炭株式会社（現・シナネンホールディングス）が設立、販売開始
1948年（昭和23年）：橋本産業株式会社が設立、販売開始
1955年（昭和30年）：三鱗無煙炭株式会社（現・ミツウロコグループホールディングス）が製造・販売開始
1999年（平成11年）：ミスジが豆炭の自社製造から撤退
2013年（平成25年）：シナネンホールディングスと橋本産業が固形燃料部門を統合
2019年（平成31年）：シナネンホールディングスが固形燃料事業から撤退

豆炭の製造・販売に関わる企業は、豆炭あんかや豆炭炬燵などの関連製品の製造も手がけています。これらの企業は、練炭などの他の固形燃料メーカーとともに、日本練炭工業会を形成しています。

燃焼時間

豆炭の燃焼時間は、使用する器具によって異なります。

七輪：約3時間
練炭コンロ：約4〜5時間
火鉢：約8時間
豆炭あんか、豆炭炬燵：ほぼ1日

注意点

豆炭を使用する際には、以下の点に注意が必要です。

着火剤付きでないものは火がつきにくい。
木炭と比較して、燃焼時に独特の臭いがする。
燃焼時には一酸化炭素が発生するため、換気を十分に行う。
密閉された空間での使用は避ける。
豆炭あんかや豆炭炬燵の断熱材は定期的に交換する。
燃焼後の灰は、適切に処理する。

他の燃料との比較

豆炭は、木炭と比較して燃焼時間が長く、安定した火力を得ることができます。しかし、燃焼時に臭いが発生したり、一酸化炭素中毒のリスクがあるため、使用には注意が必要です。

酸性雨対策

中国の一部地域では、現在も豆炭が調理用燃料として使用されています。かつては、豆炭の原料となる石炭の硫黄成分が酸性雨の原因となっていましたが、現在では消石灰や籾殻などを混ぜた豆炭が普及し、酸性雨問題の軽減に役立っています。

まとめ

豆炭は、日本で開発された歴史ある固形燃料です。家庭用燃料として、暖房や調理に利用されてきました。しかし、使用には注意が必要であり、一酸化炭素中毒や火災などの事故を防ぐために、正しい知識を持って使用しましょう。

関連項目

練炭
炭団
木炭
* 七輪

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