豊下楢彦

豊下楢彦

プロフィール

豊下楢彦氏は、1945年生まれの日本の政治学者です。国際関係論と外交史を専門とし、特に戦後日本の外交と安全保障政策について研究しています。関西学院大学法学部教授を退任されています。

学歴と職歴

兵庫県で生まれ、甲陽学院高等学校を経て京都大学法学部を卒業。京都大学法学部助手、立命館大学法学部教授を経て、関西学院大学法学部教授を歴任されました。1995年には京都大学より博士（法学）の学位を取得しています。京都大学では、立川文彦氏に師事しました。

研究内容

豊下氏の研究は、日本の外交史、特に戦後日本の安全保障政策の形成過程に焦点を当てています。その研究は、以下の点で特筆されます。

吉田茂の外交に対する批判的検証: 『安保条約の成立』において、吉田茂首相が講和条約・安保条約締結交渉でアメリカに安易に妥協し、日本の国益を損ねたとして、吉田外交を厳しく批判しました。この研究は、三浦陽一氏の研究とともに、当時の吉田評価をめぐり大きな論争を呼びました。
「天皇外交」の存在: 豊下氏は、安保条約交渉において、アメリカとの接近を望んだ昭和天皇による「天皇外交」が存在した可能性を指摘し、その実証に努めています。

これらの研究は、戦後日本の外交政策を多角的に捉え、歴史的背景を踏まえた上で政策決定過程を考察する上で重要な貢献をしています。

受賞歴

2021年11月、第8回日本平和学会平和賞を受賞しました。この受賞は、豊下氏の平和研究に対する貢献が認められたものです。

著書

豊下氏は、多数の著書を執筆しており、その主なものとして以下のものがあります。

単著
『イタリア占領史序説――戦後外交の起点』（有斐閣、1984年）
『日本占領管理体制の成立――比較占領史序説』（岩波書店、1992年）
『安保条約の成立――吉田外交と天皇外交』（岩波書店［岩波新書］、1996年）
『集団的自衛権とは何か』（岩波書店［岩波新書］、2007年）
『昭和天皇・マッカーサー会見』（岩波書店［岩波現代文庫］、2008年）
『「尖閣問題」とは何か』（岩波書店［岩波現代文庫］、2012年）
『昭和天皇の戦後日本 〈憲法・安保体制〉にいたる道』（岩波書店、2015年）
編著
『安保条約の論理――その生成と展開』（柏書房、1999年）
共編著
（中村政則・油井大三郎）『占領改革の国際比較――日本・アジア・ヨーロッパ』（三省堂、1994年）
（古関彰一）『集団的自衛権と安全保障』（岩波新書、2014年）
（古関彰一）『沖縄 憲法なき戦後――講和条約三条と日本の安全保障』（みすず書房、2018年）
訳書
ジュリアーノ・プロカッチ『イタリア人民の歴史 Ⅰ・Ⅱ』（未來社、1984年）、Ⅰは斎藤泰弘共訳
* ヴィクトリア・デ・グラツィア『柔らかいファシズム――イタリア・ファシズムと余暇の組織化』（有斐閣、1989年）

これらの著書は、豊下氏の研究テーマである、日本の戦後外交、占領政策、安全保障問題などについて、深い洞察と分析を提供しており、学術界だけでなく一般の読者にも大きな影響を与えています。

豊下楢彦氏の研究は、現代日本の外交政策を理解する上で欠かせない視点を提供し続けています。

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