中村政則

中村政則について



中村政則(なかむら まさのり、1935年12月17日 - 2015年8月4日)は、日本の歴史学者です。専門は日本近現代史で、特に戦後史や昭和史、地主制に関する研究で知られています。一橋大学名誉教授であり、「最後の講座派」と称されました。

生い立ちと学歴


東京府新宿(現在の東京都新宿区)で生まれました。祖父は埼玉県出身です。1961年に一橋大学商学部を卒業後、1963年に同大学大学院経済学研究科修士課程を修了しました。1966年には同博士課程を単位取得退学しています。大学時代はホッケー部に所属していました。指導教官は、一橋大学の日本経済史講座断絶後に着任した古島敏雄教授で、永原慶二教授にも師事しました。

研究活動


1966年、一橋大学経済学部の専任講師となり、1970年に助教授、1977年に教授に昇進しました。1979年にはハーバード大学東アジア研究センターの客員研究員を務め、1981年には「近代日本地主制史研究 資本主義と地主制」で一橋大学から経済学博士の学位を取得しました。1989年にはオックスフォード大学ニッサン日本研究所およびセント・アントニーズ・カレッジの客員教授として、海外でも研究活動を展開しました。1994年には一橋大学附属図書館長に就任しています。1999年に一橋大学を定年退官し、名誉教授となりました。その後、2000年にハーバード大学客員研究員、2001年から2006年まで神奈川大学経済学部および大学院歴史民俗資料学研究科の特任教授を務めました。

社会活動と歴史認識


国立歴史民俗博物館の展示プロジェクト委員として、新常設展示室「現代」を担当しました。沖縄戦における集団自決問題では、「最高裁でまだ判決が出ていないので、慎重にするべきだ」と発言しました。この発言が、展示から軍命や強制があったとする説明が削除される一因となり、高嶋伸欣や林博史などの研究者から批判を受けました。

また、『『坂の上の雲』と司馬史観』などで、司馬遼太郎の日清・日露戦争に対する歴史認識を批判しました。太平洋戦争中には、学童疎開を経験しており、東京大空襲で自宅が焼失した経験から、「九条科学者の会」の呼びかけ人を務めました。

人物


中村政則は、実証的な研究に基づき、独自の視点から日本の近現代史を読み解こうとした歴史家です。その研究は、戦後日本の社会構造や政治、経済など多岐にわたり、日本の近現代史研究に大きな影響を与えました。

晩年


2011年頃から体調を崩し、2015年8月4日に肺がんのため東京都内の病院で亡くなりました。79歳でした。葬儀は府中の森市民聖苑で執り行われました。

指導した主な学生


大門正克(横浜国立大学教授)、森武麿(一橋大学名誉教授)、疋田康行(立教大学名誉教授)、佐藤正広(一橋大学教授)、庄司俊作(同志社大学教授)、浅井良夫成城大学教授)、千田稔(イオンド大学教授)、柴田善雅大東文化大学教授)、西成田豊(一橋大学名誉教授)、松本俊郎(岡山大学教授)、鈴木恒夫学習院大学教授)など、多くの著名な研究者を育成しました。また、大枝宏之(日清製粉グループ本社社長)、田中全(元四万十市市長)、大竹愼一(ファンドマネージャー)など、各界で活躍する人材も輩出しています。

著書


中村政則は、数多くの著作を残しており、その多くが日本の近現代史を理解する上で重要な文献となっています。主な著書には、以下のようなものがあります。

『日本の歴史 29 労働者と農民』
『近代日本地主制史研究――資本主義と地主制』
『昭和の歴史(2) 昭和の恐慌』
『象徴天皇制への道――米国大使グルーとその周辺』
『戦後史と象徴天皇』
『近現代史をどう見るか――司馬史観を問う』
『戦後史』
『『坂の上の雲』と司馬史観』

また、編著や共著も多数あります。

『体系日本現代史(4)戦争と国家独占資本主義』
『技術革新と女子労働』
『資料日本占領(1)天皇制』
『戦時華中の物資動員と軍票』
『占領改革の国際比較――日本・アジア・ヨーロッパ』
『戦後日本――占領と戦後改革(全6巻)』
* 『歴史家が語る戦後史と私』

その他


ゼミ生らが編者となり、『中村政則の歴史学』(日本経済評論社、2018年)が出版されています。

中村政則は、日本の近現代史研究に多大な貢献をした歴史家であり、その業績は後世に語り継がれていくでしょう。

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