豊岡鉄道部

豊岡鉄道部（とよおかてつどうぶ）は、かつて兵庫県豊岡市大手町に存在した西日本旅客鉄道（JR西日本）の鉄道部であり、車両基地としての機能も有していました。福知山支社（現在の近畿統括本部）の管轄下にありました。

概要

豊岡鉄道部は山陰本線の豊岡駅構内に位置し、1990年 6月1日にローカル線の活性化と効率的な鉄道運営を目的とした鉄道部制度導入に伴い発足しました。その源流は、日本国有鉄道（国鉄）福知山鉄道管理局豊岡機関区に遡ります。かつては蒸気機関車の拠点であり、仕業点検などが実施され、長距離列車の場合には機関車の付け替えが頻繁に行われていました。最盛期には和田山駅にも支区が設けられ、播但線の生野峠越えや宮津線（旅客列車中心）、余部橋梁や桃観トンネルといった難所の運行を一手に担っていました。

その後も福知山支社唯一の気動車検修施設として、播但線で使用される車両やラッセル車の管理を行い、運行面においても国鉄時代と同様に幅広い業務を担っていました。

管轄路線・駅

豊岡鉄道部が管轄していた路線は以下の通りです。

山陰本線：和田山駅 - 居組駅（和田山駅は福知山支社の直轄）

管轄区間内でJR西日本の社員が配置されていた駅は、豊岡駅と城崎温泉駅のみでした。八鹿駅・江原駅・香住駅・浜坂駅は、ジェイアール西日本福知山メンテックに業務委託されており、みどりの窓口も設置されていましたが、養父駅・竹野駅は簡易委託駅であり、みどりの窓口はありませんでした。特に養父駅は無人駅と同様の扱いとなっていました。それ以外の駅はすべて無人駅でした。

所属車両の略号

発足当初は、近畿圏運行本部を表す「近」と組み合わせた「近トヨ」が使用されていました。旅客車は福知山支社の略号「福」と豊岡の電報略号である「トカ」から構成された「福トカ」、機関車は「豊」と表記されていました。2022年10月以降は旅客車が「近トカ」に統一されています。

過去の所属車両

かつては、播但線と山陰本線で運行される気動車が多数所属していました。

気動車
キハ40形気動車
キハ41形気動車
キハ47形気動車
キハ58系気動車

特にキハ58系気動車は、かつて急行「丹後」「但馬」「わかさ」で使用されていた車両で、1996年3月16日のダイヤ改正で多くが余剰となり、廃車またはタイ国鉄へ譲渡されました。一部はワンマン車両や波動輸送用として残り、1999年10月に舞鶴線電化と福知山駅高架工事の進捗に伴い、豊岡鉄道部へ転属しました。

転属後、キハ58形2両（キハ58 7202・7208）とキハ28形1両（キハ28 3021）が最終的に残り、波動輸送用の車両は廃車、ワンマン車両は小浜鉄道部と高岡鉄道部へ転属となりました。転属した車両のうち、越前大野鉄道部を経て高岡鉄道部へ復帰したキハ58 1114は、キハ58形の中で最後まで残った温暖地向けのパノラミックウィンドウ車でした。

残った車両は、当時の城崎駅長の発案により、国鉄急行色をベースにイカ釣り漁をイメージした塗装が施され、内装も改装されました。編成の両端となるキハ58形2両は室内の天井に特殊塗装が施され、通路となるキハ28形は喫煙スペースに変更されました。シーズン中は臨時快速「いさり火」として、また各種臨時・団体列車やカニシーズンには普通列車の増結として運行されました。この列車は、日本海に浮かぶイカ釣り船の漁火を車窓から眺め、余部橋梁を含む景勝地で徐行運転を行うというコンセプトで運行され、現在の臨時快速「あまるべロマン号」の原型とも言える列車でした。

カニシーズン終了後の2002年3月頃から運用を離脱し、保留車となりました。2002年8月28日には、一般向けの豊岡駅 - 浜坂駅間の臨時快速「さよならいさり火号」として、29・30日には福知山駅 - 城崎駅間で団体列車として、キハ58 7208+キハ28 3021の2両編成でさよなら運転が行われました。

この他、「セイシェル」も配置され、福知山運転所から豊岡鉄道部へ転属し、団体臨時列車などに使用されましたが、2005年1月の団体臨時列車を最後に引退し、3月31日付で廃車となりました。

ディーゼル機関車
DE10形
DE15形
DD51形
貨車
ホキ800形

乗務範囲

豊岡鉄道部の乗務員は、以下の列車に乗務していました。

優等列車
特急「はまかぜ」：姫路駅 - 香住駅・浜坂駅・鳥取駅間
特急「こうのとり」「きのさき」：城崎温泉駅・豊岡駅 - 福知山駅の一部区間
過去に乗務した列車
寝台特急「出雲」：鳥取駅 - 福知山駅間
特急「タンゴディスカバリー」：福知山駅・綾部駅 - 京都駅間
普通列車
山陰本線：福知山駅 - 浜坂駅間（豊岡駅 - 城崎温泉駅間の京都丹後鉄道直通快速列車を含む）の一部
播但線：姫路駅 - 和田山駅間（一部列車）

歴史

豊岡鉄道部は、以下のような歴史を辿ってきました。

1909年（明治42年）：豊岡機関庫を創設。
1936年（昭和11年）9月1日：豊岡機関区に改称。和田山分庫を和田山支区に改称。
1985年（昭和60年）3月14日：豊岡機関区和田山支区を和田山派出所に改称。
1986年（昭和61年）3月3日：豊岡機関区と福知山客貨車区豊岡派出所を統合して豊岡運転区が発足。和田山派出所は運転区の派出所として存置。
1987年（昭和62年）4月1日：国鉄分割民営化により、豊岡運転区が豊岡運転所として発足。和田山派出所は引き続き設置。
1990年（平成2年）6月1日：鉄道部制度に伴い、第1次鉄道部として発足。豊岡運転所・福知山車掌区豊岡派出所が統合。
1991年（平成3年）3月：和田山派出所が廃止（福崎鉄道部に改組・独立）。
1999年（平成11年）10月2日：福知山駅周辺の高架事業により、気動車検修機能を移設。1992年に福知山運転所に車両配置を一本化して以来、車両配置が復活。
2010年（平成22年）6月1日：豊岡鉄道部が廃止（同日付で福崎鉄道部も廃止）。運転関係は豊岡列車区・福知山車掌区へ、車両・検修関係は福知山電車区豊岡支所へ移管。

その他

豊岡鉄道部では、国鉄時代の慣習として、定期検査で所属車両を後藤総合車両所へ送る際に、配給列車を設定せず、当時運行されていた普通客車列車に併結して米子駅まで回送していました。この慣習は、平成8年12月のダイヤ改正で鳥取以東の普通客車列車が廃止されるまで続けられました。

もう一度検索