豊島恕平

豊島恕平

豊島恕平（とよしま じょへい、1862年 - 1920年）は、信濃国伊那郡高遠（現在の長野県伊那市高遠町）に生まれた医師、実業家、政治家です。高遠電灯の社長や高遠電気軌道の創立者として知られ、立憲政友会に所属し、長野県会議員も務めました。

生い立ちと青年時代

1862年、高遠藩士である亀井則義の九男として誕生しました。後に親戚の豊島篤次の養子となり、豊島家を継ぎました。1878年には長崎中学校を卒業後、長崎医学校に進学し、医学の道を志しました。

医師としての活動

1884年に医術開業試験に合格し、医師免許を取得。三菱会社の高島炭鉱病院に勤務した後、1889年には医学をさらに深めるため上京し、順天堂医院の佐藤泰然博士に外科を、山竜堂の樫村清徳博士に内科を学びました。1896年には国立伝染病研究所で北里柴三郎博士から細菌学の指導を受け、医学の研鑽を積みました。1897年に郷里の高遠に戻り、豊島医院を開業。地域医療に貢献する傍ら、東京帝国大学医科や順天堂大学の研修会にも積極的に参加し、常に最新の医療知識を習得しようと努めました。1900年には高遠小学校や長藤小学校の校医も務め、赤痢が流行した際には的確な診療で多くの人々を救い、長野県から銀盃を授与されました。

政治家としての活動

1907年、上[[伊那郡]]会議員に当選し、副議長に就任。1911年には長野県会議員に当選し、こちらも副議長を務めました。長野県会議員を2期8年務めた後、黒河内一太郎がその職を引き継ぎました。1912年と1913年に開催された陸軍特別大演習では、大正天皇から午餐を賜るという栄誉にも浴しました。

実業家としての活動

実業家としては、1913年に高遠電灯株式会社を設立し、社長に就任。当時、高遠町は電気の供給が遅れていましたが、この会社設立により、町に電気が灯されるようになりました。2代目社長は黒河内千代太郎、3代目社長は黒河内義夫が務め、後に伊那電気鉄道に吸収されました。また、1918年には三峯川や藤沢川沿岸の耕地を宅地化し、高遠劇場を建設。劇場の周辺には桜町という歓楽街を造成しました。桜町には料亭が立ち並び、約40人の芸妓が在籍するなど、上[[伊那郡]]一の歓楽郷として賑わいました。劇場前には豊島の銅像が建立されましたが、太平洋戦争時に本体は供出され、現在では石造の台座のみが残っています。1920年には高遠電気軌道を設立し、高遠町と伊那町を結ぶ電車運行を計画しましたが、同年9月29日に急逝しました。

豊島恕平は、医師としての地域医療への貢献に加え、実業家、政治家としても多岐にわたる分野で活躍し、故郷の発展に大きく貢献した人物として、その功績は今も語り継がれています。

参考文献

上伊那誌編纂会『上伊那誌 長野県 第4巻 人物篇』上伊那誌刊行会、1970年、281-282頁
黒河内太郎「高遠電灯 豊島恕平他有志10名で発起」『高遠』高遠郷土研究会会、1981年、第11号
高遠町誌人物篇編纂委員会『高遠町誌 人物編』高遠町、1986年
高遠町誌編纂委員会『高遠町誌 下巻』高遠町、1979年

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