豊島郡 (武蔵国)

豊島郡の概観

豊島郡（としまぐん）は、かつて武蔵国および東京府に存在していた郡で、現在の東京都の中心部に広がっていました。具体的には、千代田区、中央区、港区、台東区、文京区、新宿区、渋谷区、豊島区、荒川区、北区、板橋区、墨田区の南部、および練馬区のほぼ全域を含む地域です。この地区は、行政区画として明確に区分けされていたわけではありませんが、豊島郡という名称は、この地の歴史的な足跡を今に伝えています。

古代の郡域

古代において、豊島郡の領域は、現在の白子川、新河岸川、隅田川、日本橋川、神田川に囲まれる範囲と考えられています。和名抄には、日頭、占方、荒墓、湯島、広岡、余戸、駅家の7つの郷が記されており、これらの郷が現代の地名とどのように結びつくかは研究が進められています。

郷の解説

1. 日頭（ひのと）： 現在の文京区小日向が位置するこの地域は、小日向や新宿区戸塚町などを指すとされます。

2. 占方（うらかた）： 浦方と解釈される説もあれば、江戸期の浅草や小石川に関連付けられることもあります。

3. 荒墓（あらはか）： 日暮里や谷中あたりとされ、文京区大塚との関連性が指摘されています。

4. 湯島（ゆしま）： 現在の文京区湯島が形成されることになります。

5. 広岡（ひろおか）： 板橋宿の一部がこの名前に関連しており、新座郡とも関わりがあるとされています。

6. 余戸（あまるべ）： 新宿区淀橋周辺が関連付けられています。

7. 駅家（うまや）： 北区西ケ原の近くにあり、郡衙が存在していたと伝わります。

歴史的背景

豊島郡は武蔵国の中でも古くから栄えており、特に平安時代末期には豊島氏がこの地を治めていました。その他にも葛西氏や江戸氏といった勢力がこの地域に影響を与えましたが、室町時代前には去っていきました。戦国時代に入ると、扇谷上杉家の家臣である太田道真と道灌によって豊島氏は滅ぼされ、以降後北条氏がこの地域を支配することになりました。

1580年代に入ると、徳川氏が江戸を拠点にし、最終的には江戸幕府を開いて国の政治の中心地としました。江戸時代以降、江戸市中は豊島郡から分かれた新しい区画が形成されました。

近世以降の変遷

1868年には府藩県三治制が導入され、数次の行政区分変更を経て、1871年に東京府が設立され、豊島郡はその中で新たな役割を担います。1878年には郡区町村編制法の施行により、豊島郡は北豊島郡と南豊島郡に分割され、消滅しました。

各時代の行政上の変化は、豊島郡の歴史を形作る重要な要素であり、過去の名残が現在の東京都の中で息づいています。豊島郡の歴史は、地域の文化や人々の生活に深い影響を与え続けているのです。

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