豊川町 (函館市)

豊川町（とよかわちょう）

豊川町は、北海道函館市に属する町丁の一つです。郵便番号は040-0065となっています。

地理と概要

函館市の旧市街地の中でも、函館港に面した砂州上に位置し、函館山の山麓にあたる地域です。古くから港湾機能と深く結びつき、歴史的な建造物も多く残るエリアに含まれています。町内には、かつて函館郵便局として使用された現「はこだて明治館」や、函館市水産物卸売市場などが立地しています。

町の歴史

現在の豊川町は、昭和40年（1965年）に複数の町域を統合して誕生しました。具体的には、かつての地蔵町全域と、西川町、宝町、船場町、恵比寿町の各一部を合わせて成立しています。

これらの旧町丁には、それぞれ異なる歴史があります。

地蔵町

「じぞうまち」と読まれた地蔵町は、その名の通り延命地蔵堂の存在に由来するとされ、寛政3年（1791年）には既に確認されていたという古い歴史を持つ地名です。かつて存在した掘割に架かる永国橋（異国橋とも）付近は、箱館戦争において旧幕府軍の幹部である土方歳三が戦死した場所の候補地の一つとして語り継がれています（島田魁や中島登らの記録に基づく異国橋説）。

宝町

宝町は、明治8年（1875年）4月、政府が貯蔵米を保管していた義倉が移転した跡地に新たに作られた町です。この地域には高田屋嘉兵衛に関連する多くの米倉も存在しており、商業的な賑わいがあったことがうかがえます。また、明治11年（1878年）7月10日には公立の宝学校が開設され、教育の拠点となりました。後の明治14年（1881年）1月23日には、その校舎において初の函館区会議員選挙が実施され、同年4月5日から7月10日にかけて第1回函館区会が開催されました。この地は、函館市議会の発祥の地として歴史に名を刻んでいます。

船場町

船場町は、享和3年（1803年）に函館奉行や、その隣接地を高田屋嘉兵衛が埋め立てを行い、造船所を建設したことに始まります。「古築島（こつきしま）」とも呼ばれたこの地は、港湾関連産業の歴史と深く結びついています。明治5年（1872年）8月26日には、9番地（現在の末広町の一部にあたる）に「函館気候測量所（現在の函館地方気象台の前身）」が設置され、観測が開始されましたが、明治12年（1879年）6月6日には高砂町（現在の若松町の一部）に移転しています。

西川町と恵比寿町についても、豊川町が成立する際にその一部が編入されています。

現在の豊川町

現在の豊川町には、以下のような施設や交通網が存在します。

道路

国道279号、国道338号が町域を通っています。
北海道道675号立待岬函館停車場線も経由しています。

公共交通機関

函館市企業局交通部（函館市電）の魚市場通停留場が利用可能です。

港湾施設

函館港の一部である豊川ふ頭があります。

教育機関

精華学園高等学校函館校（山口県に本部を持つ通信制高校のキャンパス）

宿泊施設

ラビスタ函館ベイ（開拓使函館常備倉や旧安田倉庫の跡地に建つリゾートホテル）

かつて存在した主な施設

豊川町は、その歴史の中で函館市の行政や公共機能の中心地の一つでもありました。かつて町内に存在した公共施設としては、函館区役所やその後の函館市役所本庁舎（後に東雲町へ移転）、市民館や市立函館保健所（後に五稜郭町へ移転）、そして函館競輪場十字街場外車券売場（市立函館保健所と同じ建物を使用し、後に末広町へ移転）などがあり、これらの施設の移転は町の機能の変化を示す歴史的側面でもあります。

豊川町は、古くからの歴史と港湾の発展、そして近代以降の行政や教育、商業の変遷を経て現在の姿に至っており、函館市の歴史を語る上で重要な地域の一つです。

参考文献

元木省吾 著『新編＝函館町物語』幻洋社, 1987年
須藤隆仙 編『箱館戦争のすべて』新人物往来社, 1984年
* 須藤隆仙 著『函館=その歴史・史跡・風土=』南北海道史研究会, 1975年

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